白雪千夜「私の魔法使い」
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33:9/27  ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 20:04:49.68 ID:ldlfMP+C0
「それで、今日はどうしたんだ」

 回りくどいことをせずとも、話があるならいくらでも耳を傾ける所存である。千夜がそうしないのは、まだ千夜から信頼を得られていないことに他ならない。気軽に頼れる間柄とは認識されていないのだ。

 千夜もどこまで踏み込んだものか迷っているらしいが、ちとせにしか見せないような顔をおいそれとは拝ませてくれない。

 元々ちとせとの時間を何より大事にしていた千夜だ。ちとせから託された、千夜を独りでも歩いていけるようにしたいという切な願い。それを叶えさせるためにも、千夜のことをもっと知る必要がある。

「……服」

「服?」

「あのふざけたメイド服です。その代わりとなるものを、お嬢さまから贈られました」

「だいぶはしゃいでたもんな……ちとせ」

 以降、使用人にふさわしい服装として、働くときはなるべく着用しなくてはならなくなったとか。着る本人よりよほど気に入っているようだ。

「お前のせいで着替える手間が増えたのです。……まあ、お嬢さまがよく褒めてくださるので、不問にしますが」

「手間っていっても、帰ったらまずは着替えるもんだろう。というか千夜って私服で事務所来ないよな」

「学生は学生服を着るものでしょう。寝る時は寝間着に、身体を動かす時は運動着に。それ以外はあまり必要ではありません」

「え、じゃあ家に帰ってもずっと制服なの?」

「あれも制服というなら……まあ、今はほぼ。何か問題でも?」

 高校を卒業したら事務所へは何を着てくるつもりなのか、とは聞けなかった。確かにレッスン前にジャージへ着替える以外の時は、いつでも制服を纏っていたが。

「……欲しい、とは思わないんだろうな。その、ファッション誌とかも」

「不要です。着飾るのはお嬢さまのような方がすべきこと、私は特に興味ありません。強いて言うなら黒くさえあれば」

「言い切るね。黒はこだわり?」

「……落ち着くので。いけませんか? それだけに、珍しがってお嬢さまは私を着飾らせて遊んでいるのでしょう。いい着せ替え人形です」

 初めてちとせが千夜を連れてこの部屋を訪れた時、だだっ広い割に何もない部屋を見てちとせは『千夜ちゃんの部屋みたい』と言っていた覚えがある。

 ということは、普段から余計な物を持とうとしない生活を送っているに違いない。あんなに大事にされているのだ、黒埼家の金銭面にもちとせを見る限りは問題あるまい。

 貯金に回しているのか、はたまた本当に何も要らないのか。判断を下すには情報が足りない。

「うーん……あ」



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