158: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 14:35:55.16 ID:ZRhpxi3E0
一瞬、紗代子はハッとすると進む先、頭上の女体山を見上げた。
紗代子「プロ……デューサー?」
麗花「紗代子ちゃん? どうしたの?」
159: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 14:38:56.04 ID:ZRhpxi3E0
麗花「紗代子ちゃんのプロデューサーさんって、どんな人なのかな?」
紗代子「きっと私と違って、自信に満ちあふれた人じゃないかなって思います」
麗花「それはどうして?」
160: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 14:39:59.74 ID:ZRhpxi3E0
かつての山男とはいえ、そのブランクは深刻だった。まして彼は、ここ暫くはろくに部屋から出てすらいなかったのだ。
女体山頂を目指すコースは、かなりの急勾配だ。それを彼は、必死に進んでいく。
P「紗代子……今、行くぞ……紗代子……」
161: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 14:42:15.83 ID:ZRhpxi3E0
紗代子「プロデューサー……ですか?」
P「紗代子……!」
どこにこれほどの元気が残っていたのかという勢いでプロデューサーは立ち上がると、肩を掴んだ。
162: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 14:43:37.78 ID:ZRhpxi3E0
P「なんだ……俺の早トチリか……良かった……」
紗代子「プロデューサー、もしかして私を心配して来てくれたんですか?」
プロデューサーの傍らに、紗代子は腰を下ろす。その顔つきは、心配と申し訳なさがない交ぜになっている。
163: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 14:44:56.58 ID:ZRhpxi3E0
P「いや、無事で何よりだ……」
青空がプロデューサーの目に映る。確かにいい天気だ。
もう人前に出ることもない。そう考えていた自分が、気がつけばここまで夢中でやって来て、空を見上げている。
それがなんだか可笑しかった。無性に可笑しかった。
164: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 14:45:22.08 ID:ZRhpxi3E0
麗花「じゃあ紗代子ちゃんは、お迎えに来た白馬の普通の人にお任せしちゃいますね」
P「べ、別に俺は1人で帰るつもりだ……が」
165: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 14:45:52.45 ID:ZRhpxi3E0
麗花「紗代子ちゃんのプロデューサーさんは、山登りをする人なんですね?」
この娘は、おそらく自分の服装や装備を見てそう思ったのだろう。
プロデューサーは、そう思った。確かにそれなりに準備をしたとはいえ、着ているものも持っている装備も、いささか年季が入ってはいるが、それなりのものだ。
166: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 14:46:21.03 ID:ZRhpxi3E0
北上麗花は、顔に風を受け微笑んでいた。
幸せな気持ちだった。
どうして紗代子が急に山に行きたいと言い出したのか、彼女はなんとなく言葉を濁していたが、彼女のプロデューサーに出会ったことで、麗花は全てを理解した。
167: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 14:48:13.37 ID:ZRhpxi3E0
麗花と別れた後、2人は駐車場に停めてあったプロデューサーの車に乗り込む。そして車が走り出しても、2人は無言のままだった。
それぞれ、お互いに話したいこと、聞きたいことはたくさんある。
だが、そのきっかけが掴めない。
168: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 14:50:04.55 ID:ZRhpxi3E0
P「いや、それはいい……んだが、そもそもなんで山に登ろうと思ったんだ?」
プロデューサーの問いに、急に紗代子は俯く。その頬は少し赤くなっている。
P「どうした?」
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