66: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 07:14:54.38 ID:nY0iWbpOO
「たーまやー!」
「かーぎやー!」
市販の打ち上げ花火だから星空まで高く咲くわけじゃないけど、やっぱり轟音と共に花火が広がる音はいくつになってもテンションが上がる。周りに誰もいないのをいいことに俺たちは夜遅くまで花火に興じた。近所迷惑だー! と怒鳴り込んでくる人がいたらいたで俺たちにとっては朗報だし、そういった意味もあって娯楽とサバイバルを兼ねているのだ。
67: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 07:15:26.75 ID:nY0iWbpOO
「部屋の中で寝てて良かった」
12月15日がリセットされた朝、外は雪は降っていないが吐く息が白くなるくらいには寒く冬が訪れたようだった。前もそうだったけど夏が来た後は秋をすっ飛ばして冬が来るらしい。
「俺まで風邪ひいたら不味かったもんな。ほら、美穂」
68: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 07:16:06.64 ID:nY0iWbpOO
「ふふっ」
慌てる俺を美穂は笑うけどその声に元気はない。
「ねえ、プロデューサーさん」
69: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 07:17:22.50 ID:nY0iWbpOO
「なぁ、芳乃。君は一体何があったんだ」
帰ってきた亜季から薬をもらい美穂の部屋の中に入れておく。扉を開けることがしても彼女は気付かないくらいに深い眠りについていた。みんなは寮にいても退屈だという事で、加蓮の提案で遠くまで遊べそうなところを探しに行っているそうだ。つまりこの寮にいるのは俺とおやすみ中の美穂、そして石像となった芳乃だけ。窓のカーテンは閉まっていて暗くなった部屋の中、ポツンと立っている芳乃は寂しそうに見えた。
「肇も悠貴も心配してる。でもどうすりゃ良いんだ……?」
70: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 07:18:27.74 ID:nY0iWbpOO
「いや、待てよ」
芳乃は肇に何かが起きそうな事を話していた。予め何か知っていたのなら、俺たちに対してヒントを残してたりやしないだろうか。万が一自分の身に何かあったとしても、対処できるように。
「……すまん芳乃、ちょっと探させてもらうよ」
71: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 07:19:08.92 ID:nY0iWbpOO
「昨日はすみません、熱出してみなさんに迷惑かけちゃって」
「気にしないで美穂ちゃん。私たちが体調悪くしたら、その時はお願いね」
「うん。卯月ちゃん、ありがとうね」
72: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 07:19:58.51 ID:nY0iWbpOO
「ではこれより射撃訓練を始めます、! ここでは私が教官であります! 話しかけられた時以外口を開くな! 分かりましたか!?」
「イエスマム!」
「……何やってんだ?」
73: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 07:20:27.02 ID:nY0iWbpOO
「卯月ちゃん焼けたね」
「えへへ……日焼け止め塗ってもちょっと焼けやすいみたいです」
「ほら、美穂ちゃんも一緒に泳ぎましょう!」
74: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 07:21:07.75 ID:nY0iWbpOO
そして一晩あければ冬が来る。寝る前シャワーを浴びたらヒリヒリすると言っていた卯月もいつもの肌に戻っている。窓の外は大雪で一寸先すら見えない。とてもじゃないけど外で遊ぼうって気にはならなかった。
「それで芳乃の部屋から何か見つかった?」
各々時間を適当につぶして夜になる。俺と肇は寮の中にあった囲碁をパチパチと打ちながら芳乃の部屋の話をしていた。あの時加蓮が現れたから打ち切ったけど、芳乃の部屋の中にまだ何かあると俺は見ていた。そこで彼女と交友が深く。部屋に入ってもおかしくない肇に芳乃が残したメッセージを探してもらっていたのだ。しかしことはそう簡単にはいかない。相手は嫌味な性格をしてる割には用心深いらしく、現状を打破出来そうなものはほとんど持っていかれたそうだ。もしかしたら俺たちが強制的に眠ってしまう間に芳乃の部屋を漁ってたりするんじゃないか?
75: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 07:23:47.78 ID:nY0iWbpOO
「肇は知らないかもしれないけど、昔俺がプレイしたゲームに真実の姿を表す鏡があったんだ」
「真実の姿、ですか?」
「言ってしまえばモンスターがいくら上手に化けてしまおうが、コイツが写せば立ち所に真実の姿を晒すってやつなんだけど」
76: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 07:24:18.45 ID:nY0iWbpOO
思いもよらぬ言葉が飛んできた為びっくりして声が大きくなってしまう。なんだなんだとみんなが俺の方を見る。
「う、現川焼!」
「ええ? き、キツツキ?」
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