66: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 07:14:54.38 ID:nY0iWbpOO
「たーまやー!」
「かーぎやー!」
市販の打ち上げ花火だから星空まで高く咲くわけじゃないけど、やっぱり轟音と共に花火が広がる音はいくつになってもテンションが上がる。周りに誰もいないのをいいことに俺たちは夜遅くまで花火に興じた。近所迷惑だー! と怒鳴り込んでくる人がいたらいたで俺たちにとっては朗報だし、そういった意味もあって娯楽とサバイバルを兼ねているのだ。
「美穂、ちょっと借りるよ」
「あっ、プロデューサーさん」
パチパチと小さく燃えていた美穂の花火から火を移すと火花が咲いてリズミカルに音が鳴り始める。
「美穂は打ち上げ花火に行かなくて良いの?」
派手に火花散る打ち上げ花火に一瞬目をやるけどすぐに消えそうな線香花火に視線を戻した。
「どちらかというと、私こっちの方が好きなんです。小さくても最後まで頑張って輝こうとしていて……うまく言えないんですけどね」
「いや、分かるよ。美穂の言いたいこと。俺も同じ考えだと思うからさ」
打ち上げ花火の音にかき消されて小さな火花の声は聞こえない。だけど最後まで咲き続けようとした線香花火がほんの一瞬だけ見せた石ほどの大きさもない残り火が綺麗で、その瞬間が永遠に続けば良いなと思ってしまったんだ。
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