39: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 01:01:43.91 ID:nY0iWbpOO
今でこそステージで激しいダンスも踊りバラエティ番組でロードランナーの上を走ってクイズに答える加蓮だけど、昔は身体が強くなく入退院を繰り返していたそうだ。本人は大丈夫大丈夫と言ってはいるが……。
「みんな過保護だって。それに今頗る体調良いから大丈夫だよ、風邪なんかひくわけないって」
「しんどくなったらすぐに言うんだぞ? 加蓮に風邪引かせようものなら先輩に何をされるか」
40: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 01:02:12.92 ID:nY0iWbpOO
「えっと確か、この辺りだったよね」
「あれあれ! 表札にも多田ってあるよ」
案外李衣菜の家は事務所の近くにあった。加蓮と美穂を車内に残してチャイムを鳴らす。ピンポンとチャイム音が響くも出て来る気配はない。というか他の家同様誰かが住んでいる空気ではなかった。
41: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 01:03:34.52 ID:nY0iWbpOO
「李衣菜の部屋にも……いないか」
部屋という部屋を探して回ったが石像の一つもありゃしない。そりゃあ一般家庭に自分の姿を象った石像があれば怖いけどもさ。分かったこといえば李衣菜の部屋はすみずみまで掃除が行き届いているということくらいか。響子が見たら不満を覚えそうだ。
「李衣菜ちゃん……」
42: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 01:04:03.06 ID:nY0iWbpOO
「やっぱ美嘉も莉嘉もいないか」
城ヶ崎家も探索してみたけど真新しいものはない。姉妹の石像は当然ないし、強いて気づいたことと言えば美嘉の部屋にミニうえきちゃんが飾ってあったことくらいだ。
「お前は何か知らないのか?」
43: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 01:05:56.78 ID:nY0iWbpOO
「これ使いな」
「えぐっ……ありがとうございます……ごめんなさい、プロデューサーさんのハンカチ借りちゃって」
白いハンカチに涙が染みる。なに、ハンカチの方も俺に使われるよりも女の子に使ってもらった方が嬉しいに決まっているさ。
44: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 01:07:59.87 ID:nY0iWbpOO
「プ、プロデューサーさん……」
「美穂、俺はここにいるよ」
「えっ?」
45: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 01:08:27.62 ID:nY0iWbpOO
「……」
「……」
運転席と助手席に並んで座る俺と美穂は会話もなく、お互い顔を赤くしていた。我ながらよくもまぁあんな臭い台詞を吐いたものだ。気まずそうなオーラを出している俺たちを後部座席に座る加蓮はへー、ふーん、そうかぁ、と単語を発さず1人納得したようにニヤニヤしている。これは当分2人しておもちゃにされそうだ。
46: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 01:09:12.02 ID:nY0iWbpOO
「なあ卯月。何やってんの?」
「見ての通り、雪ぴにゃこら太です! 肇ちゃん、陶芸やってるから雪だるま作るのも上手なんですよ」
「幼き頃から大雪が降ると祖父に雪だるまの作り方を教えてもらったものです」
47: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 01:11:06.23 ID:nY0iWbpOO
「なんにせよ腹が減ってはなんとやら! 昨日のカレーがまだあります! 一晩寝かしたカレーは絶品でありますからね! 毎日が金曜日!」
カレーが嫌いな人はいない。亜季のランチはカレー宣言にみんな声をあげて喜ぶ。昔聞いたことがあるがカレーは出来立てよりも一晩寝かせた方が確かに美味しくなるらしく、科学的な根拠もあるそうだ。一度冷ましたカレーを温め直すことで熟成が進行して旨味が出るんだとか。
「でもプロデューサーさん。昨日今日で夏からいきなり冬になりましたけど……私たち、本当に一晩だけ寝てたんでしょうか?」
48: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 01:11:41.37 ID:nY0iWbpOO
「事務所の時計台がめちゃくちゃなテンポで時を刻んでいるのは、故障や演出なんかじゃなくて本当のこと、なのかもしれませんね」
「じゃあちょっと待った。食材はどうなるんだ!?」
藍子や亜季の話が正しいならば、あれだけ備蓄されていた食料も腐っているはずだ。
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