40: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 01:02:12.92 ID:nY0iWbpOO
「えっと確か、この辺りだったよね」
「あれあれ! 表札にも多田ってあるよ」
案外李衣菜の家は事務所の近くにあった。加蓮と美穂を車内に残してチャイムを鳴らす。ピンポンとチャイム音が響くも出て来る気配はない。というか他の家同様誰かが住んでいる空気ではなかった。
「出て来ませんか?」
「何回か鳴らしてるんだけどね……っておい加蓮!?」
加蓮がドアノブを回すとガチャリとドアが開く。
「私たち李衣菜のお母さんとも面識あるし部屋分かるから」
「うーん、空き巣みたいな真似はしたくないけど……」
「怒られたらごめんなさいって謝れば済む話だよ、こんな状況ならそれくらい大したことじゃないでしょ」
加蓮の言うとおりもし多田家の皆さんが命の危機に瀕していたら? と最悪一歩手前の可能性が過ってしまい2人と一緒に中に入る。すみません、お邪魔します。
「高そうなヘッドホン持ってるって聞いてたからそうかなって思ってたけど、結構良い家に住んでるな」
「李衣菜ちゃんカレイの煮付けも作れるしコーヒーも入れれるし……普段はロックロックって言ってますけど、育ちが良いんですよ? お父さんとお母さんの教育が行き届いてるんでしょうね」
「まあ礼儀はしっかりしてる子だしな」
「遠まわしに私は慇懃無礼だーって言ってない?」
「言ってないし言葉を選ぶよ。せめて歯に衣着せぬって言わせて」
往々にしてロックスターという人種は不思議と育ちが良かったりする。音楽を始めるってなるとそれなりにお金がいるから当然の帰結と言えばそうなのかもしれない。いずれにわかと笑われた彼女も歴史に名を残すロックスターになるのかもしれないな。
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