258:名無しNIPPER[saga]
2019/11/24(日) 00:20:02.85 ID:Hn+oLRjQ0
「謙遜ではありませんよ……すみません、そろそろお嬢様の」
咳払いをした。
やはり、言い慣れないな。
259:名無しNIPPER[saga]
2019/11/24(日) 00:22:23.97 ID:Hn+oLRjQ0
美波さんがアーニャに寄り添い続けた人なら、LiPPSの人達もまた、クローネの仲間としてお嬢様に寄り添い続けた存在だ。
このステージにかけるあの人の想いを、おそらく私よりも、誰よりも理解しているのだろう。
「白雪さん」
260:名無しNIPPER[saga]
2019/11/24(日) 00:27:27.20 ID:Hn+oLRjQ0
凄い熱気だ――。
屋外のように立ち見ではなく、座席が個々に当てがわれているはずだが、観客の人達は皆総立ちでステージに夢中になっている。
私はバレないよう、そっと後ろの立見席にさり気なく陣取り、その時が来るのを待った。
蘭子さんが手をバッと広げ、いつもの挨拶をする。
261:名無しNIPPER[saga]
2019/11/24(日) 00:33:26.33 ID:Hn+oLRjQ0
な、なぜこの人が――先ほど、美城常務と一緒に見ると言っていたはずだ。
「やはりこういうのは、コッチで見ないと熱が伝わってこないからね。
美城さんも誘ったんだけど、断られてしまったよ」
262:名無しNIPPER[saga]
2019/11/24(日) 00:36:57.30 ID:Hn+oLRjQ0
黒埼ちとせ 【 アクセルレーション 】
263:名無しNIPPER[saga]
2019/11/24(日) 00:42:59.86 ID:Hn+oLRjQ0
「お嬢様……」
縦横無尽に緩急をつけたリズムが加速していく。
呼吸をするのも忘れ、目を離すことができない。
264:名無しNIPPER[saga]
2019/11/24(日) 00:46:40.36 ID:Hn+oLRjQ0
なぜ、アイドルのステージが胸を打つのか、お嬢様の姿を見てようやく分かった。
あの人は、自分を投げ出している。
本気の命を燃やしている。
265:名無しNIPPER[saga]
2019/11/24(日) 00:49:51.39 ID:Hn+oLRjQ0
「お嬢様っ!」
舞台袖に駆け込むと、お嬢様は美城常務の腕に抱かれていた。
まるで糸の切れた人形のように、その手足には力が入っておらず、目の焦点も合っていない。息も絶え絶えといった様子だ。
266:名無しNIPPER[saga]
2019/11/24(日) 00:53:14.21 ID:Hn+oLRjQ0
「当たり前です」
この人の身に何かあったら、私は346プロを許さないだろう。
それがたとえ、どれだけ感動を与えるステージを作り上げた結果であろうと。
267:名無しNIPPER[saga]
2019/11/24(日) 00:55:58.94 ID:Hn+oLRjQ0
「……チヨ」
アーニャが傍に寄り沿い、私の手を取った。
彼女にとって――私にとって、すっかり恒例になった、いつもの儀式だ。
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