白雪千夜「足りすぎている」
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267:名無しNIPPER[saga]
2019/11/24(日) 00:55:58.94 ID:Hn+oLRjQ0
「……チヨ」

 アーニャが傍に寄り沿い、私の手を取った。
 彼女にとって――私にとって、すっかり恒例になった、いつもの儀式だ。


「お嬢様……申し訳ございません」

 私はそのまま、お嬢様の元にそっと歩み寄り、身をかがめてその人の顔を見つめた。
 私にとって、かけがえのない人。生きる意味を与えた大切な人。
 たった今も、私に無二の感動をもたらしてくれた人。

 私は、この人の従者で良かった。
 だけど、今日は――。

「これから私が歌う曲が、お嬢様のためのものとならないことを、お許しください」



 お嬢様は、目をうっすらと開け、クックッと笑った。

「当たり前でしょう……そんな、千夜ちゃんの姿、見たかったんだから……」



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