白雪千夜「足りすぎている」
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261:名無しNIPPER[saga]
2019/11/24(日) 00:33:26.33 ID:Hn+oLRjQ0
 な、なぜこの人が――先ほど、美城常務と一緒に見ると言っていたはずだ。

「やはりこういうのは、コッチで見ないと熱が伝わってこないからね。
 美城さんも誘ったんだけど、断られてしまったよ」

「私を待っていたというのは……?」

 私が訝しむ表情を見せると、彼女は手を振って舞台の方へと向き直った。

「今夜の黒埼のステージは、キミのためのものだ。
 無粋な真似かも知れないけど、キミに向けられるチカラを、よりキミに近い所でアタシも共有したかった。
 それだけさ」


 蘭子さんが降りてなお、万雷の拍手がいつまでも続く中、ふと舞台が暗転した。
 直後に広がるどよめき。

「始まるよ」
 玲音さんがそっと呟く。

 そうだ、私は知っている。
 暗転した、ひっそりとした状態からこの曲は――。

「今夜、この時この瞬間……『アクセルレーション』は彼女の曲だ」


 ソリッドで重厚なロックが、目にする者をその名のごとくエクスタシーの奔流へと否応なく連れ出していく。
 割れんばかりの大歓声が巻き起こり、舞台照明がその空間の主を照らし出す。

 想像していたよりもずっとはるかに、ステージの上で舞うあの人は美しく、あまりに強すぎた。



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