白雪千夜「足りすぎている」
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260:名無しNIPPER[saga]
2019/11/24(日) 00:27:27.20 ID:Hn+oLRjQ0
 凄い熱気だ――。
 屋外のように立ち見ではなく、座席が個々に当てがわれているはずだが、観客の人達は皆総立ちでステージに夢中になっている。

 私はバレないよう、そっと後ろの立見席にさり気なく陣取り、その時が来るのを待った。
 蘭子さんが手をバッと広げ、いつもの挨拶をする。
 終了の合図だ。

「今日のお客さん達は幸せ者だな」


「――!?」

 隣に立つ人の、独り言とは思えない言葉に、思わず振り返る。
 その声は、先ほど聞いたばかりだけど、今なお強烈に印象に残っている。

「こんなに熱いひと時を、皆で共有できるのだから」


「れ……!」

 言いかけると、玲音さんは唇に人差し指を当ててニコリと笑った。
 サングラスの奥に光るであろうオッドアイは、暗がりに隠れて見えない。

「キミが来るのを待っていたよ。白雪千夜、だろう?」



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