白雪千夜「足りすぎている」
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264:名無しNIPPER[saga]
2019/11/24(日) 00:46:40.36 ID:Hn+oLRjQ0
 なぜ、アイドルのステージが胸を打つのか、お嬢様の姿を見てようやく分かった。

 あの人は、自分を投げ出している。
 本気の命を燃やしている。

 気づかぬうちに、私も叫んでいた。
 この後に控える自分の喉の調子なんて、どうでも良かった。

 ご自身のお身体のために、それまで見せていなかったはずの生への執着。
 今目の前で繰り広げられている暴力的までの美は、彼女がここに刻みつける存在の証明そのものだ。


  今のキミが進むStageは そう輝くOuter Space
  想いのままに 空へ飛び立って
  fight for your dream!


 指の先の一瞬にまで機微を感じさせる表現力。ターンのキレ。声の伸びと張り。
 パフォーマンスのレベルの高さは元より、玲音さんや私とどちらが上かなどと、考えること自体がナンセンスだと思い知らされた。

 お嬢様が手を振り上げ、舞台が暗転する。
 途端、地鳴りのような歓声が爆発し、会場が揺れて何も聞こえなくなる。


「ありがとう……さぁ、行ってあげるといい」

 私は駆け出した。
 隣の玲音さんにちゃんと挨拶をしようなどとは、考えもしなかった。



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