252:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 23:49:50.14 ID:1/ZkFkMM0
「そんなこと、聞かれても分からないなぁ。
期待に応えると言ったって、ほとんど知らない人だし……ただ、ひとつだけ思い知らされたのは、私自身の愚かさ」
俯き、胸に手を当てて、ちとせさんはそれまで押さえ込んでいたであろう想いを私に吐露する。
253:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 23:51:51.28 ID:1/ZkFkMM0
「いえ」
私が真っ直ぐに見つめると、その視線に気づいた彼女が私に向き直ってくれた。
「私の方こそ、この事務所で多くのことを学び、多くのものを得ることができました。
254:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 23:59:21.96 ID:1/ZkFkMM0
視線を戻すと、目の前の人は黙して私を見つめ続けている。
「ここまで一つのことに夢中になれるなんて、思いませんでした。
一度は心を捨てた身としては、過ぎた幸せです。
私にとって、美というのは手に入れるものではなく、眺めて愛でるもの。
255:名無しNIPPER[saga]
2019/11/24(日) 00:01:43.66 ID:Hn+oLRjQ0
「止めない」
頬から、お嬢様の手が私の首筋を撫で上げ、その指が彼女の唇にスゥッと止まる。
改めて気づかされる、息を呑むその美しさ――。
256:名無しNIPPER[saga]
2019/11/24(日) 00:11:37.14 ID:Hn+oLRjQ0
――――。
「皆さん……スパシーバ!!」
257:名無しNIPPER[saga]
2019/11/24(日) 00:16:32.77 ID:Hn+oLRjQ0
悉く、強い個を持つ集団の集まりだと、改めて思わされる。
この人達には皆、他者に分け与えずにはいられない、溢れるほどの力がある。
「チヨ」
258:名無しNIPPER[saga]
2019/11/24(日) 00:20:02.85 ID:Hn+oLRjQ0
「謙遜ではありませんよ……すみません、そろそろお嬢様の」
咳払いをした。
やはり、言い慣れないな。
259:名無しNIPPER[saga]
2019/11/24(日) 00:22:23.97 ID:Hn+oLRjQ0
美波さんがアーニャに寄り添い続けた人なら、LiPPSの人達もまた、クローネの仲間としてお嬢様に寄り添い続けた存在だ。
このステージにかけるあの人の想いを、おそらく私よりも、誰よりも理解しているのだろう。
「白雪さん」
260:名無しNIPPER[saga]
2019/11/24(日) 00:27:27.20 ID:Hn+oLRjQ0
凄い熱気だ――。
屋外のように立ち見ではなく、座席が個々に当てがわれているはずだが、観客の人達は皆総立ちでステージに夢中になっている。
私はバレないよう、そっと後ろの立見席にさり気なく陣取り、その時が来るのを待った。
蘭子さんが手をバッと広げ、いつもの挨拶をする。
261:名無しNIPPER[saga]
2019/11/24(日) 00:33:26.33 ID:Hn+oLRjQ0
な、なぜこの人が――先ほど、美城常務と一緒に見ると言っていたはずだ。
「やはりこういうのは、コッチで見ないと熱が伝わってこないからね。
美城さんも誘ったんだけど、断られてしまったよ」
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