白雪千夜「足りすぎている」
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257:名無しNIPPER[saga]
2019/11/24(日) 00:16:32.77 ID:Hn+oLRjQ0
 悉く、強い個を持つ集団の集まりだと、改めて思わされる。
 この人達には皆、他者に分け与えずにはいられない、溢れるほどの力がある。

「チヨ」

 出番を終えたばかりのアーニャが私の傍に寄り添い、手を取った。

「この後、いよいよ、チトセの出番……そして、チヨの出番、ですね。
 緊張がほぐれる、おまじないです。アズマシィ……ふふっ、アズマァーシィ〜♪」

 優しく握る、彼女の温かい手。
 彼女はこうして、私にどれほどのものを与えてくれただろう。どれだけ助けてもらえただろう。

 心の豊かな人からの温かな施しを、受け取るだけの自分が不甲斐なくて、情けない。

「……チヨ、どうしましたか? 緊張、治りませんか?」
「いえ、アーニャ」

 私はかぶりを振った。
 危うく涙が出そうになるのを笑ってごまかす。

「あなたの言うとおりだと、改めて思いました。
 優しいに、足りないも多いもないのだなと……私は、享受してばかりですね」
「? アー……チヨは、ケンソンですね?」
「ケンソン?」

 あぁ、謙遜か。
 イントネーションが少し違うだけで、途端に分かりにくくなるのだから、日本語は難しい。



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