白雪千夜「足りすぎている」
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254:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 23:59:21.96 ID:1/ZkFkMM0
 視線を戻すと、目の前の人は黙して私を見つめ続けている。

「ここまで一つのことに夢中になれるなんて、思いませんでした。
 一度は心を捨てた身としては、過ぎた幸せです。
 私にとって、美というのは手に入れるものではなく、眺めて愛でるもの。
 夜空に輝く星達がそうであるように、届かないものだから美しいのですし、それに」

 照れ臭くなり、つい首の後ろに回した手を、慌てて引っ込める。

「お嬢様のことを、“ちとせさん”などとお呼びすることにも、疲れました。
 得る喜びを教わってなお、従者としてあなたを支えることに幸せを見出す私を、どうかお許しください」


 こんなに頑張ったのは初めてだった。
 これ以上の頑張りは、この先にもあるなどと考えることはできない。

 閃光のように私の最高を今日、華々しく散らしてみせるのだと、決めていた。



 お嬢様は数回小さく頷くと、ニコリと笑い、私の頬に手を添えた。

「ありがとう……千夜ちゃんが、そんなにも私を大切に思ってくれているのは、とても嬉しいよ」
「……私を、止めないでくださるのですか?」



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