149:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 15:40:59.73 ID:1/ZkFkMM0
「凛さんも、ですか」
「え……?」
「あなたなら、理解を示してくれると思っていました」
150:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 15:42:47.86 ID:1/ZkFkMM0
しまった。
お嬢様の部屋、小窓を開けっ放しにしていたのを思い出した。
後で閉めようと思っていたのに、凛さんに気を取られてしまい、すっかり失念してしまっていた。
急いで戻りたい所だが、また凛さんと鉢合わせになるのも煩わしい。
151:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 15:49:30.32 ID:1/ZkFkMM0
「でも、凜ちゃんは千夜ちゃんのお願いに「いいよ」って言ってあげなかったね」
「…………」
「あはは、ゴメンゴメン。気を悪くしないで。
私を思ってのことだったって、分かってるよ。
152:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 15:56:51.91 ID:1/ZkFkMM0
「ちとせは、千夜のようになりたいって思ったの?」
「私、ワガママだったみたい。
欲しい物なんて無かったのに、叶う事なら自分の思うように生きたいと思ったの。
あの子が見たものを、私も見てみたい。ライブで得られる信じられない力、私も感じたいし、千夜ちゃんにも勝ちたいの。
153:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 15:59:06.74 ID:1/ZkFkMM0
――――。
私のステージが、事の発端だったというのか。
常務の過度な期待があったとはいえ、その身を削ってでもステージに立つのだという決意をお嬢様がされたのは――。
154:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 16:02:03.85 ID:1/ZkFkMM0
* * *
「レッスンをサボってまで話をしたいっていうから、何事かと思ったけど、そういう話ね」
昼下がり、346プロ内にあるカフェで、ため息が一つ生まれて消える。
155:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 16:04:24.75 ID:1/ZkFkMM0
「その辺は杏には分かんないけど、まぁいいんじゃない?
でも、プロデューサーにはちゃんと自分から言った方がいいよ」
「それは、言われるまでもありません」
「はいはい」
156:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 16:08:03.77 ID:1/ZkFkMM0
「辞めようと思えばいつでも辞められるからね」
素知らぬ顔で彼女は答えた。
ストローから口を離し、椅子の上であぐらを半分かいて店の天井を仰いでいる。
定規のアイツとはまるで正反対だ。
157:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 16:10:57.76 ID:1/ZkFkMM0
「どういうことですか?」
「だって、アイドルとしての得難き経験とやらをちとせが欲してるなら、アイドル辞めるわけないでしょ。
目標としていた千夜が辞めて、多少モチベーションが下がるくらいはあるかも知れないけど」
――反論すべき点が見つからない。
158:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 16:12:56.10 ID:1/ZkFkMM0
合理的な思考に、どこか通ずる部分があった。
異なるのは、ポテンシャル――彼女は、近道を可能にするだけの力がある。
私は言われた通りのことしかできず、それでいて客観的な思考を盾にして本音を隠す卑怯者だ。
あの日、一ノ瀬さんが言っていたことが、少し分かってきた気がする。
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