白雪千夜「足りすぎている」
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154:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 16:02:03.85 ID:1/ZkFkMM0
   * * *

「レッスンをサボってまで話をしたいっていうから、何事かと思ったけど、そういう話ね」

 昼下がり、346プロ内にあるカフェで、ため息が一つ生まれて消える。
 私としてはそれなりの覚悟を持って連れてきたものの、この人が普段通りにボンヤリしているせいで、あまりシリアスな空気が流れない。

「こういう事を相談できるのは、杏さん以外にいないと思ったので」
「杏だって、まだやったことも無いのに相談されても困るんだけどねぇ」

「いえ」
 私はかぶりを振った。
 アドバイスを期待して、あまり親しくできていない彼女をわざわざ誘ったのではない。

「杏さんなら、私の決断を否定しないだろうと思ったのです」
「つまり杏に背中を押して欲しかったってことね。千夜はいい性格してるよ」

「……そうですね」

 杏さんの言う通りだ。
 辞めたいのなら、誰に相談するまでもなく勝手に辞めればいい。
 行動を起こす前にこんな事を他人に話すのは、そうしないと踏ん切りを付けられない自分がいるからだった。

「私は、お嬢様やアーニャさん、他の皆さんとは違います。
 自分の道を自分で決めることができない、弱い人間です」



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