5: ◆kiHkJAZmtqg7[saga]
2019/08/19(月) 23:04:10.01 ID:rNK9Zl/t0
そう聞いて、嬉しくなると同時に少し惜しくも感じたものだから不思議だ。
仕事柄、アイドルの少女たちからのお悩み相談を引き受けることはたまにあった。その時はただ微笑ましく思うばかりで、我が事のように何かを感じ入ることはなかったというのに。
「ええ、もちろん。どんな話ですか?」
6: ◆kiHkJAZmtqg7[saga]
2019/08/19(月) 23:05:28.23 ID:rNK9Zl/t0
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「よう、今夜飲みに行くぞ」
7: ◆kiHkJAZmtqg7[saga]
2019/08/19(月) 23:06:12.62 ID:rNK9Zl/t0
「あ……プロデューサーさん。……で、合っていますよね?」
待ち焦がれていた、彼女がいた。
所在なさげに辺りを見回していたが、こちらに気づいて歩み寄ってくる。
8: ◆kiHkJAZmtqg7[saga]
2019/08/19(月) 23:08:45.07 ID:rNK9Zl/t0
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「……んで、何があったんだよ。週末、何やった?」
9: ◆kiHkJAZmtqg7[saga]
2019/08/19(月) 23:09:56.85 ID:rNK9Zl/t0
「お前それ、オーディションに来た子じゃないだろ」
「ご明察ですけど、よく分かりますね」
「つまり、スカウトしてきたってことだ。ヘタレなお前が。それで、実際来てくれるのか気になって集中できなかったと。なるほどなるほど」
10: ◆kiHkJAZmtqg7[saga]
2019/08/19(月) 23:11:05.95 ID:rNK9Zl/t0
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「三船さーん、準備、大丈夫そうですか?」
11: ◆kiHkJAZmtqg7[saga]
2019/08/19(月) 23:12:09.05 ID:rNK9Zl/t0
三船さんはキャンペーンガールの仕事をなんとかやり遂げ、「セクシーな見かけと恥じらいのギャップが初々しくてよかった」という、喜ぶべきか否かなんとも言えない評価をいただいた。
甘めの採点かもしれないけど、初仕事は成功と言っていいのではないだろうか。
「本当に、恥ずかしかったです……。見苦しくなかったでしょうか」
12: ◆kiHkJAZmtqg7[saga]
2019/08/19(月) 23:13:03.32 ID:rNK9Zl/t0
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三船さんへの仕事のオファーは、初仕事を終えて以来着々と増え始めていた。
熱心にレッスンに励み、仕事をこなし、少しずつアイドルとしても成長しつつある彼女は、まだ自信なさげではあるけれど目に見えて明るくなった……と、思う。
13: ◆kiHkJAZmtqg7[saga]
2019/08/19(月) 23:13:32.44 ID:rNK9Zl/t0
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「で、最近どうなんだよ? 美優ちゃんとは」
14: ◆kiHkJAZmtqg7[saga]
2019/08/19(月) 23:14:38.08 ID:rNK9Zl/t0
飲み会帰り、先輩から逃れるべくいつぞやのように一駅歩いて帰ることにした。
初めて会った日からしばらく経って、なんとなく懐かしくなったのもある。
駅と駅のちょうど真ん中あたり、広さの割に人通りの多くない道だったはずだ、と記憶を頼りに街を歩く。
不意にズボンのポケットから振動とともに着信音が鳴り響いた。軽く咳払いして、電話に出る。
15: ◆kiHkJAZmtqg7[saga]
2019/08/19(月) 23:15:40.29 ID:rNK9Zl/t0
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彼女と会うときはいつもスーツ姿だったから、着ていく服に悩むなんてことを久しぶりにした。
夜は寝つきが悪く、そのくせ早く起きすぎるなんてこともやらかした。
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