モバP「持たざる者と一人前」
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62: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/17(土) 18:13:28.71 ID:9YnfOZCp0
『君は俺の人生を変えてくれた。“君の”プロデューサーになりたいって、脇目も振らずに思ってる。……だから君は俺にとって、もう“アイドル”なんだよ』

 あっけに取られている彼女に、俺は内ポケットから名刺入れを取り出した。中には数枚の無地の名刺。俺の名前と連絡先だけ書かれた、シンプルに過ぎるそれ。

 その一枚を抜き出して、彼女の前に差し出す。
以下略 AAS



63: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/17(土) 18:13:57.73 ID:9YnfOZCp0
『三日後の土曜日、午後二時。あの交番の前の広場で待っています。……それで、最後にしますので。どこにいたって、見つけ出して見せます』

 まるで学生の告白のようだ、と内心で自嘲する。そう、それが俺のタイムリミット。それは言わなかった。同情を買いたいわけじゃあないし……夢は売っても同情を買うのはプロデューサーの仕事じゃないって、そう思うから。

 だからだろう。彼女は頷かなかった。けれども否とも言わなかった。
以下略 AAS



64: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/17(土) 18:14:45.82 ID:9YnfOZCp0
本日はここまでになります。
次回が最後になると思います。早ければ夜半にでも。
ありがとうございました。


65: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/18(日) 15:24:54.67 ID:BON9hvjh0
□ ―― □ ―― □




以下略 AAS



66: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/18(日) 15:25:21.66 ID:BON9hvjh0
(はは、馬鹿はもともとだったかな)

 小さく自嘲する。そうじゃなきゃ、こんなザマでプロデューサーになろうなんて思うはずもない。

 するとその様子を見てとったのだろう。社長が尋ねてくる。
以下略 AAS



67: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/18(日) 15:25:48.03 ID:BON9hvjh0
『け、結果的には、そうなるかもしれません。ですが、後悔はないです』

「……なるほど」

 社長は何かを考え込む素振りをした。そして数瞬後、
以下略 AAS



68: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/18(日) 15:26:14.30 ID:BON9hvjh0
「……理由を聞いても?」

 ぎらついた社長の目に射すくめられながら、それでも身を震わせて応える。

『……証明するって、言いましたから。是非もなく、は違います。約束ですから。それに――』
以下略 AAS



69: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/18(日) 15:26:40.89 ID:BON9hvjh0
「君が何を以て証明としようとしたか、それは分からん。だが君が口先だけでだまくらかそうとしたわけではない、とは分かった。……頭を上げたまえ」

 俺はまだ、頭を上げない。ひどい裏切りをしたと分かっているから。それに、そんなに軽い約束ではなかったと、今も思っているから。

 そんな俺の様子を見たのか、頭上でため息が聞こえた。
以下略 AAS



70: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/18(日) 15:27:07.59 ID:BON9hvjh0
『――っ! ちょっと、待っててください!』

 口から出てきたのはそんな言葉。そして取るものも取りあえず、俺は駆けだす。

 行き交う人の雑踏の中、何かが見えた気がした。ひどく遠い。手を伸ばそうとして、つんめのった。それでも、追った。永遠にも思える一瞬、一秒だった。
以下略 AAS



71: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/18(日) 15:27:39.75 ID:BON9hvjh0
『ええっと! そういうわけでは!』

「……ふふ、冗談だよ。もし本当に私を見つけるなら……アンタの言ったことを信じてみようかなって。今はそう思ってるんだ」

 そう言いながら見せる、はにかむような笑みに俺はもう駄目だった。思わず熱くなる目頭に、天を仰いで。眩しさなんて気にも留めず、見開いた目から涙がこぼれないように瞬いた。
以下略 AAS



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