70: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/18(日) 15:27:07.59 ID:BON9hvjh0
『――っ! ちょっと、待っててください!』
口から出てきたのはそんな言葉。そして取るものも取りあえず、俺は駆けだす。
行き交う人の雑踏の中、何かが見えた気がした。ひどく遠い。手を伸ばそうとして、つんめのった。それでも、追った。永遠にも思える一瞬、一秒だった。
そして――。
「……本当に、見付けるなんて、思わなかったよ」
『……はは、だって、そう、言いましたから』
彼女がいた。彼女が来てくれた。
「ほんとは来るつもりなんてなかったんだけれどね。でも待ちぼうけだって思ったらかわいそうだって思って」
少し複雑そうに、けれどすっきりしたような表情でそういう彼女の瞳は、どこか、なにかを見据えているように思えて。それでもまだ、信じ切れない俺は、
『そういう事と、思っても……良いんですか?』
そう問いかけてしまう。
「……なに? アンタが言ったんでしょ。この時間に待ってるって」
信じてなかったの? とばかりに、ちょっとばかり不機嫌な口ぶりでそう答える彼女。ちょっと理不尽だと思ってしまうけれど、もう、そんなことはどうでも良くて。
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