69: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/18(日) 15:26:40.89 ID:BON9hvjh0
「君が何を以て証明としようとしたか、それは分からん。だが君が口先だけでだまくらかそうとしたわけではない、とは分かった。……頭を上げたまえ」
俺はまだ、頭を上げない。ひどい裏切りをしたと分かっているから。それに、そんなに軽い約束ではなかったと、今も思っているから。
そんな俺の様子を見たのか、頭上でため息が聞こえた。
「好ましい性質ではあるが、なんとも一途すぎる男だな、君は。一念岩をも通す、という奴かね。もういい、頭を上げたまえ。三度は言わんぞ」
その言葉で、ようやくゆっくりと頭を上げる。恐る恐る社長の顔を見た。彼はどこか愉しそうにしている。
「さて、改めて訊きたい。私のプロダクションに、君の様なプロデューサーは実に相応しいと思っている。君は十分にそれを見せてくれたと思っているのだが。……どうかね?」
社長は再び、俺にそう問いかけた。だから俺もこう、応えよう。
やはり、俺は何も証明していません。だから、その申し出は受け入れられません。
そう、言葉にしようとした刹那。
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