66: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/18(日) 15:25:21.66 ID:BON9hvjh0
(はは、馬鹿はもともとだったかな)
小さく自嘲する。そうじゃなきゃ、こんなザマでプロデューサーになろうなんて思うはずもない。
するとその様子を見てとったのだろう。社長が尋ねてくる。
「おや、どうしたのかね。もしや、緊張しているのかな?」
しないはずがないじゃないか、という言葉を飲み込んで、しかしそれでもある程度の本音を込めて返答をする。
『していない……と言えば、嘘になりますね』
「そうか。それはなぜかね?」
ふと、社長が訊いた。なぜ? なぜもなにも、と思いながら俺は時計を見た。あと十分もない。これが俺の選んだことなのだから、誤魔化すことなんてしなかった。
『……正直に申し上げれば。もうすぐ、社長に謝らないといけないかもしれないから、でしょうか』
「ほう?」
社長の眼光がぎらり、と光る。
「私をだまくらかした、という事かね」
『……っ』
おもわず、びくりとする。だがかつての俺に向けられた、無責任ともいえる期待と失望。それらとは根本的に違う。今回ばかりは自業自得だ。俺が悪いし、どうしようもない。
でも、だからこそ。
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