42: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/15(木) 16:32:30.72 ID:p4U+w2zG0
□ ―― □ ―― □
『――よし、腹切って死のう』
43: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/15(木) 16:32:57.92 ID:p4U+w2zG0
『あっ』
「……ねぇ、なんでいるの?」
駅に向かって歩こうと振り返った刹那。そこにはスクールバッグを持った、制服姿の彼女がいた。遅かった、なんて考えつつその表情を見る。怒っているような、疑うような、そんな顔だ。
44: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/15(木) 16:33:26.20 ID:p4U+w2zG0
そしてどこか胡乱な目のまま俺を見据えながら、
「要るの、要らないの?」
変わらずキツめの調子で聞いてくるので、ほとんど反射的に、
45: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/15(木) 16:33:57.20 ID:p4U+w2zG0
それからの俺はきっと、奇怪な存在だっただろう。夕方の電車の中、学生たちの帰りに混じって社会人が一人、ビニルフィルムで巻かれただけの花を一輪もってたたずんでいる。
ちょいちょい突き刺さっては離れていく視線がとても痛かった。最寄り駅で降りてからは人気も減り、その視線もなくなっている。
アパートへの路地を一つ、二つと曲がって鍵を取り出した。鉄階段を上り、突き当りの自分の部屋を開ける。夕焼けに染まった1Kの部屋が出迎えてくれた。
46: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/15(木) 16:34:36.58 ID:p4U+w2zG0
『……アルバイト、行くか』
ラフな格好に着替えながら時計を見る。時刻は午後五時ちょっと過ぎ。シフトは午後十時からだからまだ余裕はある。少し仮眠をとるために布団へ横になり、目を瞑る。浮かぶのはやはり、彼女のあの凛とした姿だった。
俺自身のその有様に、思わず苦笑しつつひと眠りをする。目が覚めた時にはすっかり夜の帳が落ちきり、ネオンに負けない強い星の瞬きがいくつか空にあった。
47: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/15(木) 16:35:21.67 ID:p4U+w2zG0
本日はここまでになります。
休みの終わりも近づいてきましたし、続きは明日にでもと思います。
ありがとうございました。
48: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/17(土) 18:06:45.23 ID:9YnfOZCp0
□ ―― □ ―― □
49: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/17(土) 18:07:19.00 ID:9YnfOZCp0
『それじゃあ、また』
そう言いながら俺は花屋を後にしようとする。たぶんまた来ることになるだろう。花に詳しいわけじゃないので、買った花はだいたい二日くらいで元気をなくしていってしまうのだ。
初回に至っては水を替え忘れていたというのもあって、もう半分枯れかかっている。特に今は夏場だし、ちゃんと毎日水を替えても長持ちはしてくれない。
50: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/17(土) 18:07:45.73 ID:9YnfOZCp0
『ああ、いや。その話をするつもりはない……わけじゃないですけど。でも今日は普通に花を買いに来ただけで。このアネモネ……っていうのかな? 思いのほか彩りがあって。花のある生活っていいものなんですね』
そういうと、彼女はぽかんとした表情をする。……うん? その反応は予想していなかった。ところで初めて花の名前を知った。アネモネとはあまり聞いたことのない名前だな。日本原産ではなさそう。
あの青紫色の花を見ながらそんなことを思っていたら、彼女がじっとこちらを見ていた。なぜか刺々しいものが減っている気がする……。なんでだ。
51: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/17(土) 18:08:12.85 ID:9YnfOZCp0
それから数秒ほど彼女はそのままだったが、
「たぶんペットボトルはそこまで関係ないと思う。水切りのやり方は知ってる?」
『水切り?』
52: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/17(土) 18:08:39.85 ID:9YnfOZCp0
□ ―― □ ―― □
さてもさても、効果は抜群だった。
88Res/88.77 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20