48: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/17(土) 18:06:45.23 ID:9YnfOZCp0
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『すみませーん、花いただけますか。この青紫色のやつを』
「……972円です。包装は要りますか」
『あっ、大丈夫です。すみません、ありがとうございます』
あれから三日後の夕方、俺は花屋に居た。目の前には憮然とも、呆然ともいえる表情で俺を見据えてくる少女の姿。俺は彼女に野口さんを一枚渡して、おつりと花を受け取る。
ちなみにこの花屋で花を買うのは二度目ではない。翌日にもこの花屋で花を買っている。なので今日は三度目の購入だった。我ながらなかなかのリピーターだと思う。
……そう、花を買いに来ているだけだった。あのペットボトル花瓶は我ながらどうかと思うが、それは置いといて、花の効果は思いのほか絶大だった。殺風景な部屋に花があるだけでなんとなく気分が落ち着く。
ある意味、それに助けられているのだろう。何せ、いつもの俺だとしつこく話をしようとして、それで嫌われてしまったに違いない。いや今でも十分嫌われているとは思うけれども。
もしくは完全に諦めてしまっていたかも。けれどあの花を見ているとなんとなく、じっくりと待ってもいいんじゃないかって今は思っている。
だからもうスカウト活動はしていなかった。ほかの誰かに対しても、だ。どちらにしても話を聞いてもらえるとは思えないし、それならまだ目の前の相手に話を聞いてもらえるまで気長に待つ方がいい。
そういう意味では、常連になっているのはちょこっと話ができるくらいにまで仲良くなりたい……という打算が含まれているのだけれども。
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