51: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/17(土) 18:08:12.85 ID:9YnfOZCp0
それから数秒ほど彼女はそのままだったが、
「たぶんペットボトルはそこまで関係ないと思う。水切りのやり方は知ってる?」
『水切り?』
川とかで平たい石投げて遊ぶアレじゃないよな、たぶん。俺は軽く首を振る。すると彼女は端的に説明してくれた。
「茎の部分を綺麗な水につけたまま、切り口を斜めにして二センチくらい切り落とすこと。花がしおれるのは水が十分じゃないからだよ」
『うん? でもちゃんと水は替えてるけれど……』
「花にとって茎の切り口は傷口みたいなものだから。乾燥したりちょっとでも水が汚れると水を吸い上げる管がふさがって、それで水不足になることがあるの」
『はー……なるほど』
初耳だった。一応アパートへ持ち帰った後はちゃんとペットボトル花瓶の水を替えて、そこに挿していた。けれどそういうところは気にしたことがなかった。なんだかちょっとワクワクする。
『よぅし、じゃあ今日帰ったらさっそく試してみます。ありがとうございました』
俺は取るものも取りあえず、お礼を言ってから店を後にする。
「あっ、ちょっ……」
後ろのほうで何か声が聞こえた気がした。呼び止められたかなって一瞬思った。けれど俺は多分嫌われているし、きっと気のせいだろう。そう思って帰路を急いだのは……ある意味当然だったかもしれない。
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