52: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/17(土) 18:08:39.85 ID:9YnfOZCp0
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さてもさても、効果は抜群だった。
花屋で水切りを教えてもらって四日、俺の目の前ではアネモネの花が二輪、元気に咲いている。さすがに初回に買ったアネモネは枯れてしまったが、二回目の花はなんと水切りによって復活した。すごいな水切り。
『やっぱ凄いなあ。餅は餅屋……いや、この場合“花は花屋”というべきかな』
はたから見れば、狭苦しいアパートの一室で花を愛でる男というなかなかキツい画だ。客観的にそのことを思い出した俺はケータイを開き、いつものようにあの動画を眺める。
社長と話をして大方三週間ちょっとくらいになる。約束の一か月はもう目の前まで来ていた。厳密に何日までと決められたわけではない。ただ、日付的には三日後だった。
それでも俺は不思議と焦りを感じていない。もうすでに一度断られているにも関わらず、だ。そしてこれでダメならダメなのだろうと思えるほどに落ち着いている。
動画の再生が終わった。相変わらずこの動画の偶像《アイドル》は俺にとっての目標であり続けている。ただ、以前ほどこの動画を見返すことは少なくなった気がする。
ふとケータイの時間を見た。時刻は午後四時を過ぎた頃合い。なんとなく、あの花屋に行ってみようという気になった。
アネモネはまだ元気だから追加購入するつもりはないけれど、でもそうだな。水切りの効果があったことは報告したほうがいいかもしれない。
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