鷺沢文香「本に、命を」
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16: ◆jEbRvHU8C2[sage saga]
2019/07/14(日) 15:58:35.94 ID:UfnhAP/w0
プロデューサーさんの言い分もまた理解できてしまうだけに否定できません。
何をもってして傷みとみるかは人それぞれで、ぴたりと分ける線引きなど存在しないのです。
そんな曖昧ながら、いわゆる決して超えてはいけない線というものは確かに存在し、
それはお互いのために不可侵を守らねばならない防衛線。

以下略 AAS



17: ◆jEbRvHU8C2[sage saga]
2019/07/14(日) 15:59:08.32 ID:UfnhAP/w0
と、ここで気付いてしまいます。
事務所でも読書する機会が多い私ですので、栞を用いる機会も同じくらいあり、
ともすれば私はプロデューサーさんの嫌いなことを見せつけてしまっていたのでしょうか。

読む本は事務所名義のでなく私の持ち物だからと見逃して貰えていた可能性が、
以下略 AAS



18: ◆jEbRvHU8C2[sage saga]
2019/07/14(日) 15:59:53.21 ID:UfnhAP/w0
…踏み台から、おちる。

こうした瞬間にヒトは走馬灯をみたり知覚映像がスローモーションになるとよく言われますが、
私には何も見えず、ただ、やはりアイドルらしからぬ卑しさを思考に抱いてしまった罰なのでしょうか
と諦観するだけで、だからこそ。
以下略 AAS



19: ◆jEbRvHU8C2[sage saga]
2019/07/14(日) 16:00:21.74 ID:UfnhAP/w0
…幸いにも、痛む箇所はありません。
しかしながら、何か引っ掛かります。
落下の瞬間、それから全身への衝撃。ケガを負ってなさそうなのは良いのですが、
拭えない違和感に、背中からお尻にかけてむずむずする感覚が走って、…そのとき、ふと気付きました。

以下略 AAS



20: ◆jEbRvHU8C2[sage saga]
2019/07/14(日) 16:00:53.57 ID:UfnhAP/w0
先ほどまで顔を隠していたマスクも、私が圧し掛かったときか立ち上がるときか、
引き剥がしてしまっていたようです。

その代わりと言わんばかりに、どさりと1冊が顔に覆いかぶさって、
それをプロデューサーさんが払い除けました。
以下略 AAS



21: ◆jEbRvHU8C2[sage saga]
2019/07/14(日) 16:01:33.94 ID:UfnhAP/w0
…埃。
山に積もっていた埃が一斉に舞い、横たわるプロデューサーさんなどおかまいなしに降り戻った結果です。
掃除の手間を惜しんだツケが、よもや、こんなカタチで追い打ちにくるなんて。
ますますもって急がねばなりませんが、この分ではハンカチ1つではとても足りません。
これでマスクが残っていれば出血も埃も止められるのに、と無い物を望んでも仕方ないのです。
以下略 AAS



22: ◆jEbRvHU8C2[sage saga]
2019/07/14(日) 16:02:04.46 ID:UfnhAP/w0
いつものようにストールがあればその補助ができたのですが、生憎と今日は置いてきてしまっています。
余計な言い訳のために御洒落を拒絶し着飾ってこなかったことが裏目となりました。

更には、立ち上がったは良いものの、
立ったままで居るのが辛そうにプロデューサーさんが膝を折りながらもたれかかってきます。
以下略 AAS



23: ◆jEbRvHU8C2[sage saga]
2019/07/14(日) 16:02:42.06 ID:UfnhAP/w0
迷っている時間はありません。

私は頭を抱き留めたまま、プロデューサーさんと一緒に座り込みます。
床にお尻をつけると、私は後ずさりしました。
せめて少しでも守ろうと、顔を密着させたまま。
以下略 AAS



24: ◆jEbRvHU8C2[sage saga]
2019/07/14(日) 16:03:24.38 ID:UfnhAP/w0
そんなことを考えていると、ぬらり、ぬちょりと染み広がる生ぬるさ。
止まらない出血に痛手の深さを想うとともに、濡れ広がる感覚と温度に、
…まるで粗相をしてしまったように感じてしまって、
ぞくりと背中を駆ける気恥ずかしさに、たまらず少し身震いしました。

以下略 AAS



25: ◆jEbRvHU8C2[sage saga]
2019/07/14(日) 16:04:08.55 ID:UfnhAP/w0
私は視線を落とします。
とは言っても、いまこんな事をするのはプロデューサーさんくらいで、
視界に映ったのはやはり彼が絶え絶えに伸ばした腕で、
まるで絞め技をかけられて降参のタップをするプロレスラーのように、優しく力なく再びぽふぽふと。

以下略 AAS



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