90: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 23:24:15.92 ID:9pdDfgPfo
昨日までパーティーの会場だった広間はけいこのためにすっかりかたづけられていた。
エミリーはその広い部屋の真ん中で着物に身をつつんで、先生らしき人の手拍子に合わせてふり付けをくりかえし練習しているらしかった。
「《エミリーさん、もっと腰を落として》」
91: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 23:25:40.89 ID:9pdDfgPfo
けれど練習がもう一度始まるとエミリーのさっきの元気はどこへやら、またいやいやそうにおどっていた。おばさんに質問してみる。
「あの子日本舞踊、きらいなの?」
「Hmm...」
92: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 23:26:41.37 ID:9pdDfgPfo
ようやく終わったと思って周りを見てみると、おばさんと先生はにっこりしながら拍手をくれた。最後に小さくお辞儀をする。
エミリーはというと──まぶたをぱちくりさせて、目をキラキラさせながら「Wow...!」とか言ってた。
「That was beautiful...!」
93: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 23:27:45.02 ID:9pdDfgPfo
「……ヤマ、タナ……?」
「《ヤマトナデシコよ、エミリー》」
「《ヤマ、ト、ナデシ、コ?》」
94: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 23:28:42.37 ID:9pdDfgPfo
*
気がついたら朝になっていた。
95: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 23:29:44.51 ID:9pdDfgPfo
「……エミリー……?」
「……あれ、どうして……? ここは……」
「……エミ、り……っ……」
96: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 23:31:17.62 ID:9pdDfgPfo
──────
夕方、ロンドンにいる伊織から着信があった。
97: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 23:32:05.18 ID:9pdDfgPfo
*
数日後、劇場にようやく姿を現した伊織とエミリーの二人を、控え室でまだかまだかと待ち構えていたアイドルたちはそれはもう盛大に迎えた。
98: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 23:32:53.41 ID:9pdDfgPfo
「お帰り、エミリー」
「はい。 私も、何が何だかまだよく分かっていないのですが……仕掛け人さまにも、ご心配をおかけしてしまったようで……本当にすみません」
エミリーはペコリと頭を下げる。
99: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 23:35:12.99 ID:9pdDfgPfo
*
エミリー・スチュアート復帰公演の告知を行ってから、その日のチケットが通常の何倍もの早さで売り切れたことはただの偶然ではないだろう。
誰もが彼女の帰りを待っていたという確かな証だ。
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