エミリーが忘れた日
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94: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 23:28:42.37 ID:9pdDfgPfo
 


気がついたら朝になっていた。

あのまま私はエミリーの隣について、ベッドに寄りかかるように眠っていたらしい。
焦点の定まらない両目で床のカーペットに視線を投げる。散乱した自分の前髪が嫌になるほど不気味だった。

「……何やってんだろ、私」

目にかかって鬱陶しい残りの前髪をたくし上げて、腕にひっかけていたヘアゴムで適当に縛りつける。
部屋の隅に置かれた姿見に映る自分の姿は、まるでその見た目だけ昔に戻ったような気分だ。
眠っているエミリーに近寄って、顔をよく見てみた。まだすこし腫れぼったい両目をしっかりと閉じて、静かに規則的な呼吸音を立てている。

右頬をそっと撫でてやると──エミリーはゆっくりと目を開けた。

「《あ……ごめんなさい、起こすつもりじゃ……》」




「……伊織さま……?」




エミリーは眠そうな目をこすり、部屋を一通りくるりと見渡し、最後に私を見て、とろんとした声で言った。

彼女の発した言葉を理解した瞬間──心臓を締め付けていた蔦が一斉に解ける。



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