96:名無しNIPPER[saga]
2019/04/29(月) 01:09:20.95 ID:SYS+AFC90
ようやく丘の上にたどり着き、肩で息をしながら辺りを見渡す。
――――。
97:名無しNIPPER[saga]
2019/04/29(月) 01:12:15.27 ID:SYS+AFC90
キンモクセイが植わった、その根元に腰を下ろす。
そこにあたしは、予め持ってきたスコップで穴を掘り始めた。
普段いじっている、人の手が加わってふっくらした土とは違い、自然の中にある土というのは岩かと思えるくらいに硬くて、全然勝手が違う。
98:名無しNIPPER[saga]
2019/04/29(月) 01:15:43.36 ID:SYS+AFC90
気づくと夕美ちゃんは、いつの間にかあたしの隣に座っていた。
「貸してっ」
言うが早いか、あたしの手の中にあったスコップをサッと取って、穴を掘り始める。
99:名無しNIPPER[saga]
2019/04/29(月) 01:19:38.27 ID:SYS+AFC90
あたしがチョビッと広げ、夕美ちゃんが手直ししてくれた穴に、二人でピンクのキンモクセイを植えた。
文句なしの『大胆』を彼女に想起させるほどのドギツい真っピンクが保たれているかどうかは、暗くて分からない。
「はぁ……ちょっと、休もっか」
「そうだね」
100:名無しNIPPER[saga]
2019/04/29(月) 01:22:10.36 ID:SYS+AFC90
夕美ちゃんは、どこか困ったように、視線を外した。
「うーん……」
101:名無しNIPPER[saga]
2019/04/29(月) 01:28:07.50 ID:SYS+AFC90
無理矢理夕美ちゃんの手に一本持たせて、あたしはプルタブに指を掛けた。
プシュッと開けると、うわっ。
あ、そっか、炭酸だもんね。
102:名無しNIPPER[saga]
2019/04/29(月) 01:33:12.73 ID:SYS+AFC90
彼女の方を直視することなく、澄み渡る夜空にあたしの笑い声を無理矢理に溶かしていく。
全部全部、何もかも忘れさせてやりたかった。
夕美ちゃんの思考も。今回のことで、怒ったり悲しんだりした人の思考も。
103:名無しNIPPER[saga]
2019/04/29(月) 01:37:14.50 ID:SYS+AFC90
「……いや、優しいっていうか、あたしのワガママなんだけど」
やっぱり夕美ちゃんは分かってないなぁ。
「あたしがそうしたいからそうするの。
104:名無しNIPPER[saga]
2019/04/29(月) 01:39:35.34 ID:SYS+AFC90
「ん? ううん、むしろ笑っちゃう」
「じゃあ、「ごめんね、一緒に住めない」って言ったら、どう?」
「事情にもよるけど、まぁそうかーってカンジかにゃ?
気持ちは分かるからねー、あたしが言うのもなんだけど」
105:名無しNIPPER[saga]
2019/04/29(月) 01:41:54.51 ID:SYS+AFC90
「にゃははは、思い通りにならない事なんてケミストやってりゃ日常茶飯事だからねー♪」
全てが二つに一つだった。
予測通りに行くか、行かないか。白か黒でしかないのだ。
138Res/139.96 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20