14:名無しNIPPER[saga]
2019/04/28(日) 19:52:19.90 ID:D/gZfYJM0
あたしは、人間付き合いの経験が浅い。
気づけばあたしの回りには、権威と呼ばれるお偉い先生ばかりが集まっていた。
あたしが適当なプレゼンをすれば、彼らは何でも持て囃した。
15:名無しNIPPER[saga]
2019/04/28(日) 19:53:55.72 ID:D/gZfYJM0
「あ……し、志希ちゃん?」
「ん?」
ふと、夕美ちゃんがあたしの顔を覗き込んだ後、ちょっと顔を伏せた。
16:名無しNIPPER[saga]
2019/04/28(日) 19:55:43.77 ID:D/gZfYJM0
「夕美ちゃん」
「ん、何?」
服屋さんを出て、大きな袋を両手にいくつも抱える夕美ちゃんがくるりと振り返る。
中身はほとんどあたしのものだ。
17:名無しNIPPER[saga]
2019/04/28(日) 19:57:28.09 ID:D/gZfYJM0
お腹を抱えてゲラゲラと笑う。
あたしのアイドルとしての知名度はまだそんなに無いけれど、往来のど真ん中で大声を張り上げれば、そこそこ人目にはつくものだ。
「し、志希ちゃんっ! 恥ずかしいから、もう行こう、ねっ?」
「うんうん、夕美ちゃんの行きたい所にね」
18:名無しNIPPER[saga]
2019/04/28(日) 20:01:26.46 ID:D/gZfYJM0
荷物を駅のロッカーに預け、連れられた先は――。
へぇー、お花屋さんかぁ。
「ひょっとして、夕美ちゃんまたあたしに気を遣った?」
「えっ、志希ちゃんもお花好きなの?」
19:名無しNIPPER[saga]
2019/04/28(日) 20:05:33.05 ID:D/gZfYJM0
「夕美ちゃんの家にも行っていい?」
「えっ? い、いいけど、どうせ帰る所一緒じゃない?」
夕美ちゃんとあたしは、マンションが同じだ。
事務所が借りている部屋が何戸かあり、主に地方から上京してきたアイドルの単身住まい用として提供されている。
20:名無しNIPPER[saga]
2019/04/28(日) 20:13:39.56 ID:D/gZfYJM0
夕美ちゃんの部屋は、まるで植物園だった。
リビングもバルコニーも、床もテーブルの上も、至る所に大小色とりどりの花が咲き乱れている。
よくよく見たら、植木鉢や花瓶だけでなく、スリッパやトイレのペーパーホルダーのカバー、食器、冷蔵庫のマグネット等、あらゆる小物に至るまで、花柄のモチーフで溢れていた。
ここまで徹底していると、感心してため息が出る。
21:名無しNIPPER[saga]
2019/04/28(日) 20:15:41.53 ID:D/gZfYJM0
でも、一つ分かったことがある。
夕美ちゃんの面倒見の良さは、どうやら花の世話をしていく中で培われたものらしい。
これだけ多くの種類があると、花を咲かせる時期も、留意すべきポイントもたくさんあるだろう。
それらを全て把握して、時宜を得た世話を続けていくことは、並大抵のことではない。
22:名無しNIPPER[saga]
2019/04/28(日) 20:18:32.75 ID:D/gZfYJM0
――――
先般の疑問の答えは、今のところハッキリとは表れていない。
23:名無しNIPPER[saga]
2019/04/28(日) 20:24:59.61 ID:D/gZfYJM0
「それなら、あたしも好きで夕美ちゃんの自主練に付き合うから、気にしないでいいよー♪ どんとまいんど」
「だ、だからっ! 志希ちゃんが一緒に上手くなっちゃうと、差が縮まらないでしょっ!」
どうやら、一方的に負い目を感じているようである。
なーんかニホンジン的なんだよねー。卑下や謙遜は美徳ではない。ましてあたし達アイドルだよ?
24:名無しNIPPER[saga]
2019/04/28(日) 20:28:01.47 ID:D/gZfYJM0
一方で、一つ断りを入れさせてもらうならば――。
「夕美ちゃーん」
「んー?」
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