一ノ瀬志希「ほころび」
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20:名無しNIPPER[saga]
2019/04/28(日) 20:13:39.56 ID:D/gZfYJM0
 夕美ちゃんの部屋は、まるで植物園だった。
 リビングもバルコニーも、床もテーブルの上も、至る所に大小色とりどりの花が咲き乱れている。

 よくよく見たら、植木鉢や花瓶だけでなく、スリッパやトイレのペーパーホルダーのカバー、食器、冷蔵庫のマグネット等、あらゆる小物に至るまで、花柄のモチーフで溢れていた。
 ここまで徹底していると、感心してため息が出る。

 心持ち、黄色系統の花が多いかな――夕美ちゃんの好きな色なのかも知れない。
 そういえば、さっき買ったベゴニアという花も黄色だ。

 部屋を観察している内に、バルコニーの方でゴソゴソしていた夕美ちゃんが戻ってきた。

「さっき買った子を、鉢に植えなきゃ。志希ちゃん、こっち来てみて」


 そこそこの大きさの鉢植えに、袋詰めにされた土をスコップで入れていく夕美ちゃん。
 いくつか種類があるらしい。

「今日買ったベゴニアは、四季咲きベゴニアって言って、一番ポピュラーな品種なのっ。
 それで、これを植える時の土の配合は、腐葉土を入れて、あとは水はけを良くするために小粒の赤玉土と、パーライト、あとはこの……しょっと、このピートモスっていう、コケを乾燥させたヤツを混ぜ合わせるといいかな。
 で、苗をこう入れて……お水はたっぷり入れます。何でもそうなんだけど、土に直接こうして……ほら、下から出て来たでしょ? ここまでちゃんと……」


 言いかけて、夕美ちゃんは止まって、顔を俯かせた。

「? どうしたの?」
「ううん……また、一人で突っ走っちゃったかなぁって。ごめんね」
「えぇー?」

 夕美ちゃん、またヘンな所で謝るなぁ。おかしくないのに謝るのはおかしい。



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