126:名無しNIPPER[saga]
2019/04/29(月) 02:43:04.15 ID:SYS+AFC90
――――。
寒さで目を覚ましたけれど、陽はもう昇っていた。
時間を確認しようとスマホを取り出すと、プロデューサーからの着信がたくさん表示されている。
127:名無しNIPPER[saga]
2019/04/29(月) 02:45:50.97 ID:SYS+AFC90
もういいや、どうにでもなれ。
このまま目を閉じていれば、この悲しみも忘れられるかも知れない。
あるいは――。
128:名無しNIPPER[saga]
2019/04/29(月) 02:47:24.06 ID:SYS+AFC90
起き上がって、そのそばに近づく。
昨日は暗くてよく見えなかったドギツい真っピンクが、小さいながらもその存在感を無遠慮に主張している。
でも、本来キンモクセイは秋の花。
129:名無しNIPPER[saga]
2019/04/29(月) 02:51:18.86 ID:SYS+AFC90
振り返って丘の下を見ると、お爺さんが空き缶を持って立っていた。
手の中にあるのは、空になったあの缶ビールだ。
「……管理人さん?」
130:名無しNIPPER[saga]
2019/04/29(月) 03:04:03.55 ID:SYS+AFC90
「……え」
どっこいしょ、っとお爺ちゃんは芝生の上に腰を下ろした。
131:名無しNIPPER[saga]
2019/04/29(月) 03:05:51.67 ID:SYS+AFC90
「アイドルは、それを咲かせることができるからすごい、とあの子はよく言っていました」
立ち上がってお尻をポンポンと叩き、お爺ちゃんはあたしの方へ歩み寄ってくる。
「いつか皆を笑顔にできるその子を、私は笑顔にしてみせたいのだとも……ところで、妙ですな」
132:名無しNIPPER[saga]
2019/04/29(月) 03:08:59.30 ID:SYS+AFC90
――!?
「え、黄色?」
「まさに謙虚と言いますか、しかし、確かな存在感を放っている……
133:名無しNIPPER[saga]
2019/04/29(月) 03:12:18.26 ID:SYS+AFC90
「あの子がここを忘れることなどありません」
お爺ちゃんはニッコリと笑いかけた。
「もちろん、このキンモクセイもね」
134:名無しNIPPER[saga]
2019/04/29(月) 03:21:59.49 ID:SYS+AFC90
「……ありがとう」
謝る以外で人に頭を下げることは、たぶん初めてかも知れなかった。
あたしはお爺ちゃんとキンモクセイに、一旦別れを告げる。
135:名無しNIPPER[sage]
2019/04/29(月) 03:24:15.21 ID:h7H+XLyEo
読ませるねえ
おかげで寝不足だよこんちくしょう
136:名無しNIPPER[sage saga]
2019/04/29(月) 03:24:26.88 ID:SYS+AFC90
Mr.Childrenの『ほころび』という曲を基に書きました。
途中、同曲の歌詞を所々引用しています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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