11:名無しNIPPER[saga]
2019/02/08(金) 22:23:01.28 ID:441QTGT20
――――
「だからと言って、ケンカをしたいってことは無いでしょう」
12:名無しNIPPER[saga]
2019/02/08(金) 22:24:00.46 ID:441QTGT20
「開けるまでならいいですよ、飲まないならね」
「中身を捨てろと?」
「ここはオフィスです、楓さん」
缶チューハイを片手に、キョトンと小首を傾げる担当アイドルを目の当たりにして、思わずため息がついて出る。
13:名無しNIPPER[saga]
2019/02/08(金) 22:24:44.05 ID:441QTGT20
「──何でしょう」
今日の活動報告は、大体作り終えた。
そうでなくとも、いつにも増して真剣な彼女の表情は、俺の手を止めるのに十分だった。
14:名無しNIPPER[saga]
2019/02/08(金) 22:25:58.34 ID:441QTGT20
大胆な物言いだな──
あるいは楓さんも、この二人きりの空間に流れる妙な空気にあてられているのかも知れない。
「こっちも、意地悪な言い方になるけど」
15:名無しNIPPER[saga]
2019/02/08(金) 22:27:24.77 ID:441QTGT20
「えっ?」
何と無しに、その場で背を少し伸ばす。
こんな時、俺も夏樹のようにそのソファーに腰を下ろして、フォークギターの一つでも弾けたらな──なんて。
16:名無しNIPPER[saga]
2019/02/08(金) 22:28:33.43 ID:441QTGT20
ひとしきり言い終わって冷静になり、ふと自分に驚いた。
こんな想いを、いつの間にやり場もなく抱いていたとは──。
でも、照れくささこそあれ、恥ずかしいという気持ちはあまり無い。
仮に今、俺の顔が赤くなっていたとしても、夕日のせいにすればいいや。
17:名無しNIPPER[saga]
2019/02/08(金) 22:29:47.33 ID:441QTGT20
俺はまだ、この人が演技以外で泣いた姿を見たことがなかった。
それはたぶん、今まで本音をさらけ出す相手がいなかった、この人のつよがりでもあるのかも知れない。
「まぁ、いいです」
18:名無しNIPPER[saga]
2019/02/08(金) 22:31:01.58 ID:441QTGT20
唐突に窓を叩く音がしたので、顔を上げる。
「あ──ふふっ。プロデューサー、こっち」
19:名無しNIPPER[saga]
2019/02/08(金) 22:31:43.95 ID:441QTGT20
何やってんだよ、いい歳して。どうでもいいけどさ。
「まぁ、楓さんなら居るだけで彼らを喜ばせられるだろうけど」
「何ですか?」
「何でもない」
20:名無しNIPPER[saga]
2019/02/08(金) 22:33:24.82 ID:441QTGT20
だから、楓さん──。
もし、あなたが誰で、何のために生きているか。
あなた自身がそれに迷う時があれば、その謎が早く解けるよう、俺は──。
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