38:名無しNIPPER[saga]
2018/12/28(金) 21:51:41.50 ID:JbQZeQhn0
「何で、って……代わりにやるからだろ? 年越しの手続きを」
「質問が悪かった。じゃあ、何で代わりが必要なんだ?」
「それは……」
「昔は、自分でできたのさ。
39:名無しNIPPER[saga]
2018/12/28(金) 21:54:36.61 ID:JbQZeQhn0
――今の時代に留まりたいと願うだけで、本当に年越しができなくなるものなのか。
にわかには信じられないが、実際こういう仕事に携わっているのだから、疑う余地は無い。
だが、いま一つ腑に落ちない。
40:名無しNIPPER[saga]
2018/12/28(金) 21:57:01.83 ID:JbQZeQhn0
「じゃあ何だよ」
さっさとアイツのつまみを回しに行けばいいのに。
いい加減、寒さで体が冷えてきて、ついイライラしてしまう。
41:名無しNIPPER[saga]
2018/12/28(金) 22:00:23.77 ID:JbQZeQhn0
「長いこと、この仕事してると、色々と達観しちまうんだよ」
ジイサンの笑顔は、嬉しそうでもあるようで、どこか寂しそうでもあった。
それは、僕が勝手にそう思っただけかも知れなかった。
42:名無しNIPPER[saga]
2018/12/28(金) 22:05:31.04 ID:JbQZeQhn0
チラッと、デロリアンの時計が目に入った。
あと数分で年が明ける――僕達の一年間が消える。
「ジイサンの言う通り、人は誰だって、心のどこかに恥とか自負を持っている。
それがあるから傷つくのだし、傷つきたくないから見栄を張る。
43:名無しNIPPER[saga]
2018/12/28(金) 22:07:53.57 ID:JbQZeQhn0
「役回りが違えば、違うなりの需要はあるんだよ。
だから、俺もお前も、あのクソガキも皆同列だ……そうでもなきゃ、やってられんさ」
「――そうかもな」
44:名無しNIPPER[saga]
2018/12/28(金) 22:10:54.45 ID:JbQZeQhn0
「アイツが年越しすりゃ、俺とアイツはますます離れていっちまう。
たかが一年くらい、俺だけのために足踏みしてもらいたかった、って……そんだけだ」
「――ハッハッハッハ」
45:名無しNIPPER[saga]
2018/12/28(金) 22:13:35.76 ID:JbQZeQhn0
「――僕の方こそ」
この手を握ったら、ジイサンともお別れだ。
記憶を引き継げない事の寂しさが、今年は一層重く、強く押し寄せる。
46:名無しNIPPER[saga]
2018/12/28(金) 22:15:22.10 ID:JbQZeQhn0
――気づくと僕は、見慣れないマンションの一室で目が覚めていた。
金が無いので銀行へ行くが、年始のこの時期は開いておらず、コンビニに行ってみる。
47:名無しNIPPER[saga]
2018/12/28(金) 22:23:26.85 ID:JbQZeQhn0
更地になった場所に以前何が建っていたのか、思い出すのは難しい。
新しい道路や建物は人々の記憶ごと街並みを上書きし、利便性と豊かさを与え続ける。
高度に発達したインフラはあらゆる障壁や距離感を取り払い、人々の生活の速度を際限なく早めた。
昔好きだったアイドルは、軒並みオバサンになった。
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