47:名無しNIPPER[saga]
2018/12/28(金) 22:23:26.85 ID:JbQZeQhn0
更地になった場所に以前何が建っていたのか、思い出すのは難しい。
新しい道路や建物は人々の記憶ごと街並みを上書きし、利便性と豊かさを与え続ける。
高度に発達したインフラはあらゆる障壁や距離感を取り払い、人々の生活の速度を際限なく早めた。
昔好きだったアイドルは、軒並みオバサンになった。
Jリーグのチーム数は発足当時から5倍以上になり、ヴェルディにはもうビスマルクはいない。
ウルトラマンや仮面ライダーは今日も悪と戦い、マリオはクリボーを踏んづける。
ペガサス流星拳の練習をしていた公園の子供達は、今頃ガチャを回しているだろう。
国のトップが目まぐるしく入れ替わり、著名人の死を連日のニュースは報せていく。
思い出したかのように災害は起き、当事者以外の記憶は蛇口の水のように溢れる出来事が薄め続ける。
誰かが言った。
いつだって、正しい時代は無い。
今日も、どこかで誰かが時代遅れになるだろう。
あるいは流され、あるいは時代を作っていく人がいるだろう。
横浜駅がいつでも工事をしていて、街の畳屋が絶滅しないのと同じように。
それは、いつの時も、どこかで自分を必要としてくれるものがいることの裏返しなのだと。
駅の入口脇に停まった赤提灯の屋台を覗くと、若者がおでんを美味そうに頬張っている。
場違いなのはあちらなのに、何となく僕の方が居心地が悪くなり、店に入るのをやめた。
だが、あの人懐こそうな目に、今度は付き合ってみるのも悪くないかも知れない。
次に出会えるのはいつだろう?
いつか、あの赤提灯が見れなくなる日も来るのだろうか。
来るとしても、ドラえもんが生まれる方が先だろう。
たぶん、それが当然だ。
<了>
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