19:名無しNIPPER[saga]
2018/12/28(金) 20:57:09.15 ID:JbQZeQhn0
「――あ? 何見てんだよ」
「えっ」
男が僕を睨んだ。
ぶつかってきたのはそっちなのに、なぜこの男が高圧的なのか釈然としないが、面倒は避けるに限る。
20:名無しNIPPER[saga]
2018/12/28(金) 21:05:09.24 ID:JbQZeQhn0
「おい、何だお前今日もマックかよ?」
「アハハ、えぇ、まぁ……」
同僚の冷やかしを無視して、昼休みにマックへ通う日々がしばらく続いた。
あの男に出くわす日は、その1割にも満たなかったが、それでも会う度に確信めいた疑念が深まるのを感じた。
21:名無しNIPPER[saga]
2018/12/28(金) 21:06:42.19 ID:JbQZeQhn0
――――!
あの男は――。
22:名無しNIPPER[saga]
2018/12/28(金) 21:08:18.47 ID:JbQZeQhn0
こうしてはいられない。
急いで自宅に戻ってパソコンを立ち上げ、当局のシステムにアクセスし、とある個人情報を調べ上げる。
厳密に言えば、服務規律に違反する行為だが、それは今の僕にはどうでも良かった。
左腕に記されたイニシャルから突き止めた人物は、思った通りだ。
23:名無しNIPPER[saga]
2018/12/28(金) 21:10:10.95 ID:JbQZeQhn0
いつもの年末、いつもの集合場所。
「おう」
ジイサンは僕の姿を認めると、嬉しそうに手を上げて笑った。
24:名無しNIPPER[saga]
2018/12/28(金) 21:11:26.03 ID:JbQZeQhn0
この車を運転するのは、随分と久しぶりだ。
仕事に就いたばかりの頃は、下っ端という理由で、先輩風を吹かせるジイサンに運転させられていた。
だが、なにぶん僕はペーパードライバーだし、彼自身も車が好きだから、このところ僕はずっと助手席に座るだけだった。
それを承知しているはずのジイサンが、なぜ何も聞かず、僕に運転を任せたのか。
25:名無しNIPPER[saga]
2018/12/28(金) 21:13:15.13 ID:JbQZeQhn0
「最後にとっておきたい所があるんだ」
赤信号に気づき、慌ててブレーキを踏む。
やはり、我ながら僕の運転はおっかない。
だが、ファンタジー染みた車でも、現実世界の交通ルールを守らなくてはならないのは、何となくおかしな話だと思う。
26:名無しNIPPER[saga]
2018/12/28(金) 21:17:21.53 ID:JbQZeQhn0
この仕事を続けていく限り、僕達は世界の誰とも繋がらない。
誰かにとっての特別にもなることは無い。
いたかどうか分からない時代遅れの変人として、誰の記憶にも残らず、ずっと。
それがたまらなく嫌で、一度、仕事終わりに、どこかの公園のブランコに落書きをしてみた事があった。
27:名無しNIPPER[saga]
2018/12/28(金) 21:19:31.74 ID:JbQZeQhn0
ジイサンは、事も無げに鼻で笑った。
「そういう役回りを俺は選んだ」
車の乗り降りを繰り返しながら、順調に案件を消化していく。
それは当然に、次第に目的地へ近づいていくことを意味していた。
28:名無しNIPPER[saga]
2018/12/28(金) 21:21:31.06 ID:JbQZeQhn0
ギシギシと悲鳴を上げて軋む階段を二人で上がり、玄関ドアの前で立ち止まった。
「ジイサンが行ってきてくれ」
「あん?」
29:名無しNIPPER[saga]
2018/12/28(金) 21:25:16.23 ID:JbQZeQhn0
6畳1Kの部屋は、玄関から奥の腰窓に至るまで、相変わらず怠惰で埋め尽くされていた。
台所はカップ麺の捨て場となり果てており、タオルや服は畳まれないまま乱雑に放られている。
残された隙間の至る所には、雑誌やティッシュ、その他の見るに堪えないゴミが散乱していた。
49Res/44.70 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20