31: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/08/01(水) 01:10:44.92 ID:Ai+XpKnp0
「すいません、にわか知識で……」
「志乃さんにおしえてもらったほうがいいんじゃないの〜」
ようやく早苗が助け舟を出した。瑞樹は内心で、おそいっちゅーの、と思いながらも感謝した。
32: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/08/01(水) 01:11:48.87 ID:Ai+XpKnp0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「川島さん、次のライブはいつにしますか?」
レッスンの様子を見ていたプロデューサーが尋ねた。
33: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/08/01(水) 01:12:15.03 ID:Ai+XpKnp0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
会場は、都内の小さなライブハウスだった。
346プロダクション所属、という肩書きも霞んでしまうような。
34: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/08/01(水) 01:13:32.23 ID:Ai+XpKnp0
瑞樹は何も言わずドアを開けて、志乃と共に楽屋に入った。
中には、高垣楓がいた。
すでに衣装に着替えて、メイクも終えている。
35: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/08/01(水) 01:14:16.70 ID:Ai+XpKnp0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ライブハウスには気の利いた“関係者席”などなかった。
瑞樹は変装をして、観客席に紛れ込んだ。
36: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/08/01(水) 01:14:50.83 ID:Ai+XpKnp0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
曲はバラードだった。歌詞は、ありふれた失恋の物語。
その歌が心を揺さぶる。
37: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/08/01(水) 01:15:47.34 ID:Ai+XpKnp0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
高垣楓がステージの中心に立つ。
風が吹いている。瑞樹はそう思った。
38: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/08/01(水) 01:16:18.95 ID:Ai+XpKnp0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
春の陽気がうっとうしくなりはじめる頃、瑞樹はひさしぶりにテレビ局に自主出頭した。
はじめから企画は瑞樹の裁量の埒外にあって、受け持っていた番組の後任もあらかじめ準備されていた。瑞樹は、着の身着のまま346プロダクションに送り出されたようなものだった。
39: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/08/01(水) 01:16:53.83 ID:Ai+XpKnp0
いえ……“もう”半年、ね。
瑞樹は知っていた。現場から一旦遠ざかれば、それはもう局にとっては、他人なのだと。
アナウンサーでありながらも、部外者のように扱われる人間は、存在する。
瑞樹の同期にも、いた。
40: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/08/01(水) 01:17:24.19 ID:Ai+XpKnp0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「おつかれさま」
楽屋。
41: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/08/01(水) 01:18:03.50 ID:Ai+XpKnp0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
夏のこもれびが枝葉の間をぬって、肌を焦がす頃。
LIVEのパフォーマンスも安定し、好意的な手紙がふえた。瑞樹は、その中の一通にあえて目を通さずに、毎日を過ごした。
54Res/76.55 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20