【モバマス】クラリス「魔女・セイラム」
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6:名無しNIPPER[sage saga]
2018/07/14(土) 17:45:22.14 ID:TXxgAIfuO
 流れ弾は不意に来るものです。話を振られた焦りに妙な声を出してしまいましたが、私は借り物の修道服をきちんと着込んでいました。

「シスター・セイラム。私は着崩していません」
「うん。だからほら」

以下略 AAS



7:名無しNIPPER[sage saga]
2018/07/14(土) 17:46:32.29 ID:TXxgAIfuO
 軽やかな笑い声を残して、セイラムは駆け出しました。廊下を走るのもまた聖職らしさに欠ける行為で、神父様は眉間のシワに中指を添えてため息をひとつ。

「……セイラムのことは、見習わないように」

 私にそう言う彼を見るのは、何度めだったでしょう。私は苦笑だけでこたえました。
以下略 AAS



8:名無しNIPPER[sage saga]
2018/07/14(土) 17:47:26.89 ID:TXxgAIfuO
 私は日本の兵庫にある活動修道会で、修道女としての日々を過ごしていました。

 そう大きくはない教会が拠点でした。規模もそれに準じます。神父様に、シスター・セイラムを含めて修道女が三人と、聖歌隊の子供たちがいくらか。そこに私を加えた二十にも満たない頭数のコミュニティ。

 正規の誓願を受け入れてもらえる――つまり正式に修道女となれるのは十八歳からと教会法で定められているため、当時その要件を満たせていなかった私の身分には、いまだ括弧書きで見習いという文言が付いていました。
以下略 AAS



9:名無しNIPPER[sage saga]
2018/07/14(土) 17:48:36.88 ID:TXxgAIfuO
「よし。こんなものでしょ」

 手にしていた雑巾をバケツに放り込んで、セイラムが言いました。隣の掃き出し窓を同じように拭いていた私は、まだ半分ほどが終わったところです。

 私は彼女が担当した窓の、桟のあたりを指さしました。
以下略 AAS



10:名無しNIPPER[sage saga]
2018/07/14(土) 17:50:27.83 ID:TXxgAIfuO
 明けた朝には、早くから近隣に住む子供達が教会の外庭に集まっていました。

 私達は規模が規模ですので、そう大きな催しものができるわけではありません。それでも多くの参加者に集まっていただけるのは、ひとえにこの修道会が積んできた篤実さがゆえなのでしょう。

「はーい! プレゼントが欲しい子はこっち集まってね!」
以下略 AAS



11:名無しNIPPER[sage saga]
2018/07/14(土) 17:51:13.15 ID:TXxgAIfuO
 ――あはは! はーい、大事に食べてね。あたしたちが丹精込めて作ったクッキーなんだから!

 童話上のサンタクロースさながらに大きな袋から小包を取り出し、セイラムは子供達に配っています。はじめはひとつひとつ手渡していましたが、おそらく面倒になったのでしょう。まるで絵本の描写をなぞるように、途中からの小包は宙を舞って子供達の元へ届けられました。要するに、セイラムは次第に投げ渡すようになっており。

「――まあ、あとで思い切り怒るよ」
以下略 AAS



12:名無しNIPPER[sage saga]
2018/07/14(土) 17:52:15.08 ID:TXxgAIfuO
 聖堂内にはちらほらと人影が見えていました。そのうちのひとり、ある馴染みの婦人からは、「歌、楽しみにしてるからね」というお声をいただきました。

「はい。精一杯、努めさせていただきます」
「頑張ってねえ。今年もセイラムちゃんが演奏?」

以下略 AAS



13:名無しNIPPER[sage saga]
2018/07/14(土) 17:53:03.92 ID:TXxgAIfuO
「昔から変わっていない。という意味で、喜ばしいことなのでは?」
「悪いようにも取れるよ」
「そんな嫌味を言う方ではないでしょう」

 訊ねるというよりは、確かめるように私は言いました。セイラムは「ま、そうなんだけど」と呟いて、座ったままオルガンに向き直ります。
以下略 AAS



14:名無しNIPPER[sage saga]
2018/07/14(土) 17:53:48.36 ID:TXxgAIfuO
 そばにただ佇む私に、セイラムは目配せをしました。

 ――ほら、うたえるでしょ?

 言外の意味は容易に伝わります。私は少しだけためらったものの、ついには彼女の行動に添いました。
以下略 AAS



15:名無しNIPPER[sage saga]
2018/07/14(土) 17:54:42.46 ID:TXxgAIfuO
 その日の夜は、ごくささやかな慰労会が開かれました。

 私たち修道会の今年の大きな活動も、この日が最後。教派によっては飲酒を固く禁ずるところもありますが、私たちはその限りではありません。軽度にアルコールの入った会は、ゆるやかに盛り上がりを得たあとに、なだらかに落ち着きました。

 年齢の問題によってお酒を飲めなかった私は、食事を済ませたあとの時間を持て余していました。当てどのない足任せに運ばれていると、いつのまにか外庭の冷え切った大気に含まれていたことに気づきます。
以下略 AAS



16:名無しNIPPER[sage saga]
2018/07/14(土) 17:55:20.39 ID:TXxgAIfuO
 不意に、うしろから名を呼ばれて、振り向くと片手にグラスを持ったセイラムが立っていました。色白な肌には少し酒気を帯びて、ほの赤く染みた頬が艶やかでした。

「なにやってるの、こんなところで」と彼女は言いました。
「そちらこそ」
「あたしはちょっと。からだ火照ってきちゃって」
以下略 AAS



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