15:名無しNIPPER[sage saga]
2018/07/14(土) 17:54:42.46 ID:TXxgAIfuO
その日の夜は、ごくささやかな慰労会が開かれました。
私たち修道会の今年の大きな活動も、この日が最後。教派によっては飲酒を固く禁ずるところもありますが、私たちはその限りではありません。軽度にアルコールの入った会は、ゆるやかに盛り上がりを得たあとに、なだらかに落ち着きました。
年齢の問題によってお酒を飲めなかった私は、食事を済ませたあとの時間を持て余していました。当てどのない足任せに運ばれていると、いつのまにか外庭の冷え切った大気に含まれていたことに気づきます。
私は外庭が好きでした。特段なにかがあるわけでもなく、ほんのわずかな植え込みが、かろうじて遊歩に楽しむ余地を残しているだけのような空間。
なにかを好きになるときというのは、往々にして理由があるものです。汝の隣人を無償に愛せと、その教えを忠実に守られる聖哲がまれであることからもわかるように。
特別さの見えないこの庭に、好ましく思う理由を見出すのは難しいことでしょう。それでも。
私は、ここが好きなのでした。
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