14:名無しNIPPER[sage saga]
2018/07/14(土) 17:53:48.36 ID:TXxgAIfuO
そばにただ佇む私に、セイラムは目配せをしました。
――ほら、うたえるでしょ?
言外の意味は容易に伝わります。私は少しだけためらったものの、ついには彼女の行動に添いました。
音楽はひとを呼ぶものです。聖堂内に少しだけあった人影は、次第にその濃度を高めていきました。外にいた子どもたちや、その保護者の方々も続々と集まってきます。
第二編129番はどこかマドリガルの要素が感じられる、短い歌です。
ループする演奏が二度目の周期に入り、最後の囃子詞にさしかかったあたりで慌てた顔の神父様が聖堂に入ってきました。後ろからは聖歌隊の子どもたちが続きます。
彼らは、どうやら予定のキャロルが知らず始まったと勘違いしたようでした。
神父様の眉間にシワが寄り、私は素直に謝ったものの、セイラムは謝りつつも開き直って、聖歌隊と一般信徒たちがそのやりとりに笑いました。
やがて、あらかじめ組まれていたプログラムがセイラムに流されるように始まりました。
その場に居合わせなかったひとからは、もしかすると、やや粗放な進行に思われるのかもしれません。けれど、賑やかなあたたかみが確かにそこにはあったのでした。
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