【ミリマス】紗代子は最高の瞬間を掴まえたい
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59: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/07/07(土) 17:22:58.41 ID:LgMjPCNT0

「だからなるべく、後ろ向きな台詞は言いたくありません」

自分で手を加えた台本。紙がくたびれるまで何度も何度も読み直したそれを、
私は一度目の通し稽古終わり、木無塚さんに呼び出された時に持っていった。
以下略 AAS



60: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/07/07(土) 17:24:33.45 ID:LgMjPCNT0

「それは、それこそ私の演じるシャベルの娘だと思ったからです。

初め、木無塚さんはこのお話を当て書きだって教えてくれました。
だったら私の演じるこの役は、もっと私に寄せても良いだろうと」
以下略 AAS



61: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/07/07(土) 17:25:30.37 ID:LgMjPCNT0

「作り笑いを覚えたのかい?」

意地悪そうに木無塚さんが言う。
私は「いいえ」と首を振ると、絶対の自信をもってこう答えた。
以下略 AAS



62: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/07/07(土) 17:27:05.89 ID:LgMjPCNT0

「このお話、雰囲気は全体的にコメディタッチ。シャベルの娘も基本は強引に話を進める子で、
後半に向けて大団円の予感を感じさせておいて、一貫した諦めないってテーマが底にあって……

なのに最後の最後であんな結末に暗いムード。
以下略 AAS



63: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/07/07(土) 17:28:03.03 ID:LgMjPCNT0
===

「だから私は壁に穴を掘る。このシャベルで!」

そう叫んで頭上に掲げたのは、あの日に砂浜で使ったシャベルだった。
以下略 AAS



64: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/07/07(土) 17:29:10.72 ID:LgMjPCNT0

だけど私は負けられない。木無塚さんに大見得を切った手前もある。憎まれっ子世に憚るだ。

観客席からの視線をその身に浴びながら何とか私は演技を続け、
琴葉さん相手に殴り合いのような台詞の応酬を繰り広げて、見事に彼女の口から「絶望だよ!」の一言を引き出した。
以下略 AAS



65: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/07/07(土) 17:30:56.15 ID:LgMjPCNT0

だけど私は負けられない。木無塚さんに大見得を切った手前もある。憎まれっ子世に憚るだ。

観客席からの視線をその身に浴びながら何とか私は演技を続け、
琴葉さん相手に殴り合いのような台詞の応酬を繰り広げて、見事に彼女の口から「絶望だよ!」の一言を引き出した。
以下略 AAS



66: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/07/07(土) 17:31:34.10 ID:LgMjPCNT0
>>65二重投稿のミスです


67: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/07/07(土) 17:32:39.08 ID:LgMjPCNT0

その代わりに「良いじゃないか!」と声をかけてくれた人がいる。
舞台を端から見ていたプロデューサー。それから台本を片手に笑う木無塚さんだ。

「ここまでは君の演出通りだが。さて、その調子でラストまで体力は持つのかな?」
以下略 AAS



68: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/07/07(土) 17:36:08.62 ID:LgMjPCNT0
【四幕 紗代子は最高の瞬間を掴まえたい】

彼女の微笑みは狂気を孕んでいた。

なら今の私が浮かべる笑顔はなんだ?
以下略 AAS



69: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/07/07(土) 17:38:05.17 ID:LgMjPCNT0
===

「風の匂いだ!」

可憐の台詞が舞台に響き渡る。
以下略 AAS



70: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/07/07(土) 17:39:23.46 ID:LgMjPCNT0

「く、のぉぉぉ……!」

最後のカウントを振りぬいた。シャベルが壁を穿ち抜いた。

以下略 AAS



71: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/07/07(土) 17:41:39.90 ID:LgMjPCNT0

でも、その姿が悪いなんてことを誰が決めた?
これがありのままに見せる全力なんだ。走り続ける私の姿なんだ!

私は息を整えると、不敵な笑顔を顔に浮かべて彼女と向き合った。
以下略 AAS



72: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/07/07(土) 17:42:26.77 ID:LgMjPCNT0
===

舞台から袖に戻った私は、出迎えてくれたプロデューサーの腕の中へ崩れるように倒れ込んだ。

……立っているのがやっとの状態だった。膝は震えて、歯の根が合わず、
以下略 AAS



73: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/07/07(土) 17:43:17.40 ID:LgMjPCNT0

見れば、プロデューサーも涙してた。木無塚さんも満足そうに頷いていた。

エレナちゃん、美也さん、可憐が泣きながら私の体に抱き着いてきて、
琴葉さんだけが一歩引いた場所からみんなの様子を眺めていた。
以下略 AAS



74: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/07/07(土) 17:44:03.85 ID:LgMjPCNT0

「紗代子が、それだけ今の舞台に全力だったって勲章だな。……とはいえ」

プロデューサーはそう言ってタオルで涙を拭ってくれた。
彼は他の子達の涙も同じようにして拭い取ると、いつものように小さくパンと手を鳴らして。
以下略 AAS



75: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/07/07(土) 17:45:07.40 ID:LgMjPCNT0

「諸君! 最後まで笑顔はタップリとだぞ? なんてったって君たちは――」

そうして背中へ投げかけられる声に振り向くと、私は大きく頷いた。

以下略 AAS



76: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/07/07(土) 17:45:34.78 ID:LgMjPCNT0
===
以上閉幕。

お読みいただきありがとうございました。


77:名無しNIPPER[sage]
2018/07/07(土) 18:32:14.41 ID:inVt0Xboo
乙!


78: ◆NdBxVzEDf6[sage]
2018/07/07(土) 19:40:23.16 ID:I+/st7zI0
これは素晴らしい紗代子SSだわ、人選もいいね
乙です

高山紗代子(17) Vo/Pr
i.imgur.com
以下略 AAS



79:名無しNIPPER[sage]
2018/07/08(日) 12:34:26.85 ID:X2mUG/jUO
すごく良かった


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