65: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/07/07(土) 17:30:56.15 ID:LgMjPCNT0
だけど私は負けられない。木無塚さんに大見得を切った手前もある。憎まれっ子世に憚るだ。
観客席からの視線をその身に浴びながら何とか私は演技を続け、
琴葉さん相手に殴り合いのような台詞の応酬を繰り広げて、見事に彼女の口から「絶望だよ!」の一言を引き出した。
――劇の前半が、終わる。
袖に戻れば、今すぐその場にへたり込みたい気持ちをグッと堪える。
そうして目の前にいた琴葉さんに「凄かったです。さっきのやり取り」と感じたままの言葉をかけると、
彼女は「ありがとう」とこちらを見もせず歩き出した。
……きっと、ああいうのを本気の役作りだって言うんだろう。
今の彼女にとっての私はまだ、目障りなシャベルの娘なんだ。
79Res/72.84 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20