71: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/07/07(土) 17:41:39.90 ID:LgMjPCNT0
でも、その姿が悪いなんてことを誰が決めた?
これがありのままに見せる全力なんだ。走り続ける私の姿なんだ!
私は息を整えると、不敵な笑顔を顔に浮かべて彼女と向き合った。
……そういう表情の参考にしやすい人が、何かと気にかけていてくれたのは実に幸運なことだと思う。
「か……壁の向こう側にはまた壁があった。
君はまだ、バカげた空言で穴を掘り続けましょうと言うつもりか?」
琴葉さんが僅かにその身を下がらせる。
アドリブの演出だろうけど、私のやり易いようにこの場を整えてくれたんだろう。
……そうして、そういう芸当が出来るからこそ、
彼女はシャベルの娘になれなかった。だから私がこの役に選ばれた。
「ええ、そう、掘るんですよ!」
私は一歩距離を詰めて、自信満々の笑顔で台詞を紡ぐ。
体が震えてるのは疲れじゃなくて武者震いだ。
聞く人に不安を抱かせないように、ありったけの元気を込めて言い放った。
それができるからこそ私がこの役なんだ。
どこまでも愚直で不器用な私だから、もしかしたらって思わせるんだ。
「だって、壁はまだそこにあるんだから!」
力強く、大見得を切って。
「私たちはみんなでたった今、不可能を可能にしたんだから!!」
この先があるってことを信じさせる。
ゴールを切っても次のゴールが用意出来ることを、物語に幕が下ろされても、
その世界の"その後"はちゃんと続いて行くってことを証明して見せる瞬間を――ここだ!
私はここで笑顔を見せなきゃならない。飛び切り最高の景色を見た笑顔。
毎日写真で見てるあの笑顔を。人から人へと伝えられる、高山紗代子の本物の!
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