60: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/07/07(土) 17:24:33.45 ID:LgMjPCNT0
「それは、それこそ私の演じるシャベルの娘だと思ったからです。
初め、木無塚さんはこのお話を当て書きだって教えてくれました。
だったら私の演じるこの役は、もっと私に寄せても良いだろうと」
「勝手に思って変えたのか? 脚本を書いたこちらに断りなく」
「それも一度演技をお見せした後の方が、説得しやすいと思いましたから」
別に口喧嘩をしてるつもりはない。ただ、自分に正直になっただけだ。
雪歩ちゃんじゃない私だからこそできる演技。説得力あるその理由。
木無塚さんが台本を閉じてこちらに向きなおる。
その表情はまるで私のことを試すようで。
「確かに、君の演技は以前見た時よりハツラツとしていたね。
……穴を掘るシーンの途中で笑顔を忘れることも無くなってた」
「はい。ありがとうございます」
「だからこそ訊いてみたいんだよ。君は周防君に言ったそうじゃないか。
ラストシーンを知っているからこそ自分は笑顔になれないんだと」
その言葉にドキリとさせられた。
でも、どうしてそんなことを知ってるんだと動揺したってワケじゃない。
むしろ私は嬉しかった。きっとそれも、私の知らないところで桃子ちゃんが相談したりしていたんだろう……
他ならぬ私の悩みを気にかけて、彼女が自分の考えで喋ってくれたことなんだ。
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