61: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/07/07(土) 17:25:30.37 ID:LgMjPCNT0
「作り笑いを覚えたのかい?」
意地悪そうに木無塚さんが言う。
私は「いいえ」と首を振ると、絶対の自信をもってこう答えた。
「ハッピーエンドが見えるからです。穴を空けて見つけた壁のさらに向こう側へ、みんなを連れて行くだけのその形が」
私の答えを聞いた彼の眉がピクリと上がる。
「形だって? ……だが、君だって見ただろう?
あの壁の先には何もない空間があるだけかもしれない」
「なら、そこに新しい街を作ればいいんです。何も行き止まりってワケじゃないですから」
「穴は延々と掘り進められるかもしれない」
「だったら、トンネルを広げて空間を作ります。
どこまでも掘り進められるってことは、自分たちの世界を無限に広げられるってことじゃありませんか!」
そうして「詭弁だな」と呟く彼に向けて、私は強く言い放った。
「だからおかしいんですよ、それが。
どうしてあの話を書いた本人が、そんなに簡単に諦めようとするんですか!?」
稽古場中の視線が私に集まってくる。
でも、口をついて出る言葉は留まるなんてことを知らない。
79Res/72.84 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20