36: ◆Xz5sQ/W/66[sage saga]
2018/06/15(金) 20:00:08.83 ID:bVnO2WFP0
そこで一旦言葉を切ると、私は毅然と胸を張って答えたのです。
「そういうお仕事に対して中途半端なコト、私、手を抜いてるみたいで好きじゃありません。
第一、裕太郎さんには今日一日私の恋人役をしてもらうんですから」
37: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/06/15(金) 20:02:14.76 ID:bVnO2WFP0
「別にデレデレなんかしてませんよ。ただ待ち合わせ相手を探してることを伝えようとしてただけで」
「探していただなんて。入ってすぐ、私達目が合ったじゃありませんか」
38: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/06/15(金) 20:04:27.84 ID:bVnO2WFP0
そんな不満が顔に出ていたのか、プロデューサーさんは恐る恐ると口を開き。
「……怒ってます?」
39: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/06/15(金) 20:06:46.19 ID:bVnO2WFP0
テーブルの上に置かれたそれには、今度受ける雑誌のお仕事
――例の大人デートです――で赴く予定の場所がずらり。
とは言っても、大別すれば幾つかの娯楽施設とレストランに分けられるその内容は、
40: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/06/15(金) 20:08:37.40 ID:bVnO2WFP0
===
それは一羽の小鳥にまつわるお話です。
ある所に大きくて立派なお屋敷が一軒。
41: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/06/15(金) 20:10:11.98 ID:bVnO2WFP0
そうして長年飼われていた小鳥は、いつからか、
ケージの鍵が外されたままになっていることに気づきました。
それはココではない、別の籠へ、小鳥を誘う為の扉。
42: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/06/15(金) 20:13:08.46 ID:bVnO2WFP0
……それでもあの時渡された鍵の重みを、
小鳥はしっかりハッキリと覚えています。
それは心の扉を閉める鍵。
43: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/06/15(金) 20:14:01.79 ID:bVnO2WFP0
そうして歌うことの意味を改めて見出したその小鳥は、今はただ、心のままに羽ばたくだけ。
どこへ行っても、どこまで行っても、
"動く止まり木"なんて世にも変わった存在はいつでも彼女のすぐ近くに。
44: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/06/15(金) 20:16:05.11 ID:bVnO2WFP0
===
だから、私だけを見ていてください。
どうかこの手を繋いで離さないで
45: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/06/15(金) 20:17:45.82 ID:bVnO2WFP0
「私は特別なことなんて何もしてません。彼女たちが素直で良い子だから……。
その真っ直ぐな努力が実りをつけた、でしょう?」
「でもそれなら、育てられたのは歌織さんだ。流石、元は歌の先生」
46: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/06/15(金) 20:18:36.21 ID:bVnO2WFP0
「どうしたんです? 時間も余りありませんし……」
歩き出さないでいた私のことを、怪訝そうに覗き込む彼。
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