41: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/06/15(金) 20:10:11.98 ID:bVnO2WFP0
そうして長年飼われていた小鳥は、いつからか、
ケージの鍵が外されたままになっていることに気づきました。
それはココではない、別の籠へ、小鳥を誘う為の扉。
新たな飼い主に名乗りを上げた方々は、それは豪華な装飾の施された鳥籠と、
色鮮やかで美しい木の実や果実を手土産に愛らしい姫君を訪ねます。
けれども籠を向かい合わせ、扉を開けたところで彼女は止まり木から動きません。
無理やり移し替えることは今の飼い主が禁じています。
なぜならば、そうすることでこの歌姫がその歌声を失くしてしまうと知ってたから。
誰も彼もが失意のうちに屋敷の庭を後にする中で、ある日突然、
飼い主の監視を掻い潜り、塀を乗り越えて来た無作法で変わった人が一人。
『不躾なのは承知ですが、今日はアナタに会うために来たんです!』
男は、小鳥がそれまで出会ったことのある人たちに比べて随分とみすぼらしい格好をしていました。
おまけに立派な籠も持たず、両手は空で、驚く彼女の前に
ポケットからゴソゴソ取り出すのは美味しそうな餌でもない紙切れが一枚。
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