42: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/06/15(金) 20:13:08.46 ID:bVnO2WFP0
……それでもあの時渡された鍵の重みを、
小鳥はしっかりハッキリと覚えています。
それは心の扉を閉める鍵。
本当は臆病で、自信が無くて、
弱い自分を抑える強がりを閉じ込める為の扉の鍵。
代わりにその部屋から連れ出した、長年見ないふりをして来た蠢く邪悪な感情は、
けれども、上手に付き合うことで大きな勇気の源になる。飛び立つための翼になる。
年老いた主人が心配だからと言い訳して、居心地の良い止まり木の上に甘んじた。
そんなお利口な生き方を否定できるだけの愚かさを自由にした出会い。
……この時初めてその小鳥は、恐れる心があるからこそ胸はより高鳴る物だと知ったのです!
『私をこんな風にしてしまった……責任は、とって下さいね?』
変わり者の男から、新たな止まり木の代わりに差し出された指が、腕が、その肩が。
一緒に見上げる大空が、どこまでも広がる自由な空が――彼の持つ鳥籠だったと気づいた時には、
昔馴染んだ庭の籠も、ちっぽけに色あせてしまっていたのでした。
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