白菊ほたる『災いの子』
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99: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/06/02(土) 10:40:47.67 ID:Y+SAhLWq0
「……楽しかったことを思い出せばいいんでしょうか」

「思い出すんじゃなくて、そのとき楽しむ、かな?」

「よく……わかりません」
以下略 AAS



100: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/06/02(土) 10:41:34.93 ID:Y+SAhLWq0
「でしょ」

 夕美さんが嬉しそうに言う。

「今、ほたるちゃん笑ってたよ」
以下略 AAS



101: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/06/02(土) 10:42:15.02 ID:Y+SAhLWq0
 お店を出て歩いているとき、夕美さんがぴたりと足を止めた。
 どうしたんだろう、と私も立ち止まると、すぐ近くでパシンと軽い音が鳴った。
 私の顔のすぐ前に夕美さんの手があって、野球のボールが握られていた。
 夕美さんの視線は近くの高いフェンスに向いていた。どうやらそこは学校らしい、金網のフェンスの向こうから高校生ぐらいの男子が走ってきた。左手にグローブをつけている、野球部員のようだ。
 夕美さんは彼に向けて手を振り、空めがけてボールを投げた。高く上がったボールはフェンスを乗り越えて、彼が構えたグローブに入った。
以下略 AAS



102: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/06/02(土) 10:44:10.81 ID:Y+SAhLWq0
 それから、私たちはバスに乗って植物園に向かった。
 私はこういうところに来るのは初めてだったけど、夕美さんはオフの日にたびたび訪れているらしい。入園料は400円、意外と安い。人はあまり多くなくて、落ち着いた雰囲気だった。
 
 広い園内をふたりでゆっくりと、色んなお花を眺めて歩く。
 右を見ても左を見てもお花でいっぱいで、夕美さんは、はしゃいでいるといってもいいくらいに喜んでいた。お花ももちろんきれいだったけど、その嬉しそうな顔を見るだけでも来てよかったと思った。
以下略 AAS



103: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/06/02(土) 10:45:34.50 ID:Y+SAhLWq0
 園の敷地内に小さな売店があって、夕美さんが「アイス食べよっ」と言って私を引っ張っていった。
 私は昔から好きでたまに食べている棒つきアイスを買った。夕美さんも同じものを選んだ。

 ベンチに腰掛け、慎重に袋を開ける。私は開けようと力を入れた拍子に中身が吹き飛んでしまったり、ちゃんと開ききっていない袋にアイス本体がひっかかって棒だけが抜けてしまうということがよくあったから。

以下略 AAS



104: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/06/02(土) 10:46:29.52 ID:Y+SAhLWq0
 ひと通り園の中を眺め終えて、私たちは出口の近くにあるお土産屋さんに入った。
 さまざまな種類の種や小さめの鉢植え、それに植物の図鑑、お花をモチーフにした雑貨などが売っている。
 夕美さんが真剣な表情で種を選んでいた。可能なものなら全種類買っていきたいとでも思っているようだった。
 私は必要なものはなかったけど、なんとなく記念に、お花柄のついたメモ帳とシャープペンを買った。

以下略 AAS



105: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/06/02(土) 10:47:31.47 ID:Y+SAhLWq0
 私は寮に戻り、食堂で早めの夕食をとってから事務所に向かった。
「第2レッスン室を使います」と私が言うと、プロデューサーさんは、どこかとがめるような眼差しを向けてきた。

「相手は誰だ」

以下略 AAS



106: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/06/02(土) 10:48:35.91 ID:Y+SAhLWq0
 レッスン室のオーディオに持ってきたCDをセットし、再生ボタンを押す。
 流れ出した夕美さんの歌に、いっしょに歌っているつもりになって自分の声を重ねる。
 合同レッスンで見学させてもらった動きを、見よう見まねで再現する。
 見るのと自分でやるのはやっぱり大違いで、なかなかうまくはいかない。

以下略 AAS



107: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/06/02(土) 10:50:26.77 ID:Y+SAhLWq0
 その日の夜、久しぶりに実家に連絡をしてみた。思えば346プロに入ったとき、書類の郵送をしたとき以来だった。
 電話には父が出た。また移籍だろうか、と身構えてる雰囲気が電話越しでも伝わってくる。

「今度お客さん5000人ぐらい来るライブに出るんだ」

以下略 AAS



108: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/06/02(土) 10:51:19.24 ID:Y+SAhLWq0
 それから、毎日の自主レッスンと、何回かの合同レッスンを重ねて日々を過ごした。
 志希さんは、ときどき気まぐれに顔を出しては、自由奔放に歌とダンスを披露し、気付けばまたどこかに消えていた。
 夕美さんは、「困ったものだね」と笑っていた。

 休憩時間に夕美さんの前で、ひとりでこっそり練習していた夕美さんの曲をやってみた。
以下略 AAS



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