108: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/06/02(土) 10:51:19.24 ID:Y+SAhLWq0
それから、毎日の自主レッスンと、何回かの合同レッスンを重ねて日々を過ごした。
志希さんは、ときどき気まぐれに顔を出しては、自由奔放に歌とダンスを披露し、気付けばまたどこかに消えていた。
夕美さんは、「困ったものだね」と笑っていた。
休憩時間に夕美さんの前で、ひとりでこっそり練習していた夕美さんの曲をやってみた。
夕美さんは驚いたように目を見開いて、「すごい上手」と拍手をしてくれた。それから「いっしょにやってみよう」と言って、ふたりで並んで歌って踊って、聖さんから「休憩時間は休憩をしろ」と怒られた。
私の衣装も届いた。白い生地に、私の苗字に掛けたのだろう、白い菊の柄が入った羽織と、黒い袴、それに黒革のロングブーツ。白地に白い模様で見えるのかな? と思ったけど、柄の部分だけ光沢が強くなるような加工がされているらしく、鏡に向かって動いてみると、菊のお花がきらきらと輝いて見えた。
扇子も用意してもらえるという話だったけど、私はプロデューサーさんからもらった扇子を使いたいと言った。
聖さんが扇子に書かれた百折不撓の文字を見て、「お前にぴったりだ」と言った。
ライブの日が近づくにつれ、緊張で胸がどきどきした。だけどそれ以上に、わくわくもしていた。
早くその日が来ればいいのになと、夜はいつもベッドの中で、指折り数えながら眠りについた。
悪夢はもう見なかった。
202Res/248.44 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20